記事は毎月出しています。検索順位も、少しずつ上がってきました。それなのに、受付で「ホームページを見て」と言われる回数はほとんど変わりません。医院のWeb担当をしていると、こういう手応えのなさにぶつかる時期がありませんか。数を増やす以外の打ち手が思いつかないまま、月末の報告だけが積み上がっていきます。
医療業界のSEO対策に取り組む前の医院の状況
まずは、取り組みを始める前の様子から。どんな医院で、何にお金と時間を使っていたのかが分かると、あとの判断の理由も見えやすくなります。集患に悩む医院の状況は、規模や診療科が違っても似ているところが多いものです。読みながら、自院の数字を思い浮かべてみてください。
このクリニックは、駅から歩いて十分ほどの場所にあります。院長と常勤医が一名、看護師と医療事務があわせて八名という規模で、内科を中心に、小児科も診ています。開業から十二年。近隣には同じ診療科を掲げる医院が複数あり、患者さんにとっては選べる状態です。
診療の特徴と、広告やポータルサイトに頼っていた集患の状況
この医院の強みは、平日の夜と土曜の午前も開けていることでした。働きながら通う人や、学校帰りの子どもを連れた保護者に合う診療時間です。ただ、その強みが外から見えているかというと、そうでもありません。
夜の診療は、仕事帰りの人で混み合う日もあります。それでも「夜もやっている医院を探していた」という声は、受付にはあまり届きません。知ってもらえていないだけなのか、そもそも探されていないのか。そこも分からないままでした。
集患の入り口は、医療機関を紹介するポータルサイトと、検索連動の広告でした。ポータルには診療時間と地図が並び、広告は診療科と地域名で出していました。どちらも止めれば問い合わせが減るので、やめるにやめられません。費用は毎月かかり続けます。
自院のサイトからの新患も、まったくないわけではありませんでした。ただ、受付で聞き取っている来院のきっかけを見ると、その多くは「以前から知っていた」「家族に勧められた」。検索から初めて来た人は、数えるほどでした。
記事を更新し続けていた運用の実態
記事は、三年前から出し続けていました。外部のライターに依頼して月に三本、症状や病名を説明する内容が中心です。本数は百本を超え、サイトの中でいちばん多いページの種類になっていました。
担当は、医療事務のスタッフが通常業務の合間に見る形です。記事の公開作業と、月に一度の順位の確認。それ以上のことをする余裕はありません。院長は内容に目を通しますが、細かい直しまでは手が回らない状況でした。
数字の上では、悪くないように見えていたのです。検索順位は上がり、記事を読む人も増えていました。それでも、新患の数は前の年とほとんど変わりませんでした。この食い違いが、相談のきっかけになります。
医院の記事が新患につながらなかった原因
手を動かす前に、まずどこで止まっているのかを確かめました。記事が悪いのでしょうか。導線でしょうか。それとも、まったく別のところに原因があるのでしょうか。思い込みで決めてしまうと、直す場所を間違えます。
見ていったのは、次の三つです。
- 検索して来た人が知りたかったこと
どんな言葉で入ってきて、その言葉を使う人はどの段階にいたのか - 記事を読んだあとに進める先
読み終えた人が、次にどこへ行けるようになっていたのか - 医療の情報としての信頼の示し方
だれが書き、だれが内容を確認したのかが、読む人に分かる形だったか
どれか一つを直すだけでは、たぶん数字は動きません。逆にいえば、三つとも見ておけば、手を付ける順番も決められます。
検索する人の悩みと記事の内容のずれ
検索語句を並べてみると、読まれていたのは症状や病名そのものを調べる言葉です。「どういう病気か」「どんな症状が出るか」を知りたい段階の人が、圧倒的に多いのです。この段階では、まだ受診する医院を選んでいません。
もちろん、病気を調べている人がそのまま受診につながることもあります。ただ、その割合は高くありません。調べて安心して終わる人のほうが、ずっと多いのです。
この感覚は、調査の数字とも重なります。咳や鼻水、のどの痛みが出て、風邪ではないかと思ったときにどうするかを尋ねた2026年の世論調査では、医療機関に行って診察を受けると答えた人は26.3%でした。市販薬を買う人や、どれも行わない人のほうが多いという結果です。検索した人の行動そのものを測った調査ではありませんが、症状を調べている段階の人が、そのまま受診に向かうとは限らないことは読み取れます。
一方で、受診を考え始めた人が使う言葉では、ほとんど表示されていませんでした。夜間や土曜に診てもらえるか、子どもも一緒に診てもらえるか、どのくらい待つのか。こうした問いに答えるページが、サイトの中に見当たらなかったのです。
記事は読まれています。けれど、読んでいるのは受診を考えている人とは限りません。当たり前のようでいて、順位とアクセスだけを見ていると気づきにくいところでした。
記事から予約へ進む道筋の不足
記事を読み終えた人が次にどこへ行けるのか、実際になぞってみました。末尾には診療時間の案内が置かれています。ただ、それだけ。診療案内のページへのリンクも、予約への案内も見当たりません。
読んだ人にしてみれば、症状の説明を読み終えたところで話が終わっています。その医院で診てもらえるのか、いつ行けばいいのか、初めてでも大丈夫なのか。次に知りたいことへの道が用意されていませんでした。
サイトの中の動きを見ても、同じことが表れています。記事を読んだ人が診療案内のページへ進む割合は、ごくわずか。多くはそのまま離れていました。
医療の記事として信頼を示す情報の不足
もう一つ気になったのが、記事の書き手が見えないことでした。だれが書いたのか、医師が確認しているのか。ページのどこにも書かれていません。
医療の情報は、読む人の判断に直接関わります。同じ内容でも、どんな立場の人が書いたのかで受け取り方は変わるでしょう。まして、初めて訪れるサイトであればなおさらです。
外部のライターに任せきりだったことも、ここに効いていました。原稿は一般的な説明としてよく書けています。ただ、この医院で実際にどう診ているのかという手触りが、どこにもありません。
目標を新患数に置いた既存記事の棚卸し
原因が見えたところで、進め方の前提から変えることにしました。本数を追うのをやめて、新患の数から逆算します。言葉にすると簡単ですが、これまでの報告の形を手放すことでもあります。
院長と担当のスタッフに、この切り替えの意味を説明する時間を取りました。順位やアクセスは毎月動くので、報告の材料としては便利です。それでも、新患が増えないまま数字だけが伸びる状態を続けても、続ける理由が院内から失われていきます。物差しを変えるというのは、これまでの努力を否定することではありません。見る場所を、もう一段先へ動かすだけです。
成果の物差しを検索順位から新患数へ切り替えた理由
新しく置いた物差しは、検索から来た新患の数です。あわせて、記事を読んだ人のうち診療案内のページへ進んだ割合も見ることにしました。前者は取り組みの規模、後者は記事の役割が働いているかを示します。
順位とアクセスを見るのをやめたわけではありません。位置づけを変えただけです。新患の数が動いたとき、その手前で何が起きていたのかをたどる材料として扱い、月次の報告の見出しには置かないようにしました。
この切り替えで、会議の話題が変わりました。「どの記事が何位に上がったか」ではなく、「どの入り口から来た人が受診に至ったか」。話す内容が変われば、次に手を入れる場所も自然に決まっていきます。
新患の来院経路を追えるようにした計測の整え方
とはいえ、新患の数で測るには、どこから来たのかを知る必要があります。医院の場合、そこがいちばん難しいところでしょう。予約サイトを経由する人もいれば、電話をかけてくる人も、いきなり来院する人もいます。
そこで、受付の問診票に「当院を何で知りましたか」の欄を設け、選択肢を整えました。ホームページ、ポータルサイト、紹介、看板、その他。書きやすいように選択肢は少なくし、口頭でも確認する形にしています。
サイト側では、予約ページと電話番号を押した回数を計測できるようにしました。ここで注意したのは、患者さんの個人情報をサイトの計測に持ち込まないことです。追うのは、どのページから予約の入り口に進んだかまで。それ以上は、受付の記録と突き合わせる形で見ていきました。
既存記事の仕分けの基準と着手の優先順位
百本を超える記事を、一度にすべて直すことはできません。仕分けの基準を二つ決めました。読まれているかどうかと、受診の判断につなげられる内容かどうかです。
この二つの組み合わせで、着手の順番を決めています。
| 記事の状態 | 着手の扱い |
|---|---|
| 読まれていて、受診につなげられる | 最初に着手する |
| 読まれていないが、受診に近い内容 | 次に着手する |
| 読まれているが、受診と結びつかない | 手を入れずにそのまま置く |
手を入れずに残す判断も、限られた時間では立派な選択です。
仕分けの作業は、院長にも同席してもらいました。どの記事が診療の実態に合っているかは、現場でしか判断できません。画面を見ながら、これは残す、これは書き直す、と声に出して決めていく。三十分ほどで、迷いはかなり減りました。
優先順位を紙に書き出したら、思っていたより着手すべき記事は少ないことが見えてきました。三十本ほど。これなら、月に数本ずつ直していけば半年ほどで一巡します。全部やろうとしない決め方が、続けるうえで効きました。
受診を考える人の悩みに合わせた記事の書き直し
ここからが、実際に手を動かす話です。記事を書き直すといっても、文章を美しくする作業ではありません。読む人が今どの段階にいるのかを考えて、その段階に合う中身を足していく作業でした。
段階という言い方をしましたが、要するに「調べ始めたところ」なのか「もう受診するかどうかを考えている」のか、ということです。この二つでは、知りたいことがまるで違います。同じ症状の記事を読んでいても、前者は病気そのものを、後者は自分がどうすればいいかを探しています。ここを分けずに書くと、どちらにも中途半端な記事になってしまうのです。
調べ始めの段階と受診を決める段階に合わせた記事の役割分け
症状や病名を調べている段階の人に、いきなり診療案内を出しても響きません。その人がまず知りたいのは、どういう状態なのか、様子を見ていいのか、それとも早めに診てもらうべきなのか。そこに答えるのが、この段階の記事の役割です。
一方、受診を決めかけている人が知りたいのは、別のことでした。初めてでも予約は取れるのか、どのくらい時間がかかるのか、子どもを連れて行っても大丈夫か。こうした問いに答えるページを、新しく作ることにしました。

記事ごとに役割を書き出し、一覧にしています。この記事は調べ始めの人向け、この記事は受診を考えている人向け。役割が決まると、どこにどんなリンクを置けばいいのかも決まってきました。
受診の目安や診察の流れなど、通院の判断に必要な内容の追加
症状を説明する記事には、受診を考える目安を書き足しました。どういう状態が続いたら相談してほしいか、どんなときは早めに来てほしいか。院長が診察室で実際に話している内容を、そのまま文章にしています。
診察の流れも書きました。受付から問診、診察、会計までにどのくらいかかるのか。初めての人が持ってくるもの、子どもを連れてくるときに気をつけること。細かい話ですが、初めての医院に行くときに不安なのは、こういう部分でしょう。
書き足す内容は、院長へのちょっとした聞き取りから拾いました。診察室でよく聞かれることを、その場で三つ挙げてもらいます。それだけで、記事に足りない部分が浮かび上がってきます。忙しい医師から材料を引き出すには、短く区切って聞くのがいちばんでした。
ここで気をつけたのは、効果や治り方を約束する書き方をしないことです。医療の内容は一人ひとり違います。診察してみないと分からないことは、分からないと書く。そのほうが、読む人にとっても誠実な情報になります。
重複した記事の統合と、役目を終えた記事の整理
同じ症状を別の角度から書いた記事が、いくつも並んでいました。書き手が変わるたびに似た内容が増えていったのでしょう。読む人にとっては、どれを読めばいいのか分かりません。
同じ症状の記事が並んでいるとき、迷うのは「まとめるか、分けるか」の一点です。ピラクラは、新しく扱うキーワードをピラー(メイン)のページに追記するか、クラスター(サブ)として新しいページを作るかを判定し、似たキーワードを別ページにしたときに重複(カニバリゼーション)が起きないかも合わせて確かめられます。症状名の記事を一本にまとめるか、受診を決める段階の記事として切り分けるかという、この節の判断をそのまま扱える道具です。
近い内容の記事は、一本にまとめました。まとめたあとは、古いページから新しいページへ転送する処理を入れています。検索から来た人が迷子にならないよう、ここは丁寧にやりました。
季節の話題で書いた記事のうち、毎年同じ内容になるものは、日付を外して書き直しました。逆に、その年限りの内容は整理しています。残すか消すかではなく、続けて使える形に直せるかどうかで判断しました。
医療業界の広告規制と信頼性を踏まえた記事の見直し
医療の記事を扱うときに避けて通れないのが、広告の規制です。ここを曖昧にしたまま進めると、あとから大きく書き直すことになります。
厚生労働省が出している指針は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」といい、医療広告等ガイドラインと呼ばれています。平成29年に公布された医療法等の一部を改正する法律で広告の規制が見直され、医院のウェブサイトも規制の対象として扱われるようになりました。
医療の記事に求められる信頼の基準
指針では、患者さんを誘い込む意図があり、その医院が特定できる内容であれば、広告に当たるとされています。医院が自分のサイトに載せる、治療の内容や効果についての体験談も、広告に当たるとはっきり書かれています。そのうえで、省令の規定により禁止されます。
治療の前後を並べた写真も同じです。いわゆるビフォーアフター写真は、患者さんを誤認させるおそれがあるものは広告として認められません。通常必要とされる治療内容や費用、主なリスクや副作用についての詳しい説明を付けた場合は、これに当たらないとされています。

こうした決まりは、書ける内容を狭めるためのものではありません。読む人が判断を誤らないための線引きです。線が分かっていれば、その内側で書けることはたくさんあります。
院長の経験と医師の監修の記事への反映
信頼を示す方法として選んだのは、書き手と確認した人を明らかにすることでした。記事の末尾に、院長が内容を確認した旨と、医師としての経歴を載せています。だれが責任を持っているのかが見える状態です。
書き手と確認した人を文章で断るだけだと、読む人には伝わっても、機械には伝わりません。このプラグインは著者カードの表示に加えて、Article や WebPage の構造化データに author・editor・supervisor といった役割を持たせて出力します。下書きを書いたスタッフを著者、院長を監修者として別々に置けるので、「だれが書き、だれが医学的な内容を確かめたのか」を同じページの中で示せます。著者の種類も人物・組織・法人から選べます。
中身にも、院長の言葉を入れていきました。診察室でよく受ける質問、説明するときに使っている言い回し、判断に迷う場面での考え方。一般的な説明だけの記事とは、読み心地が変わります。
確認の負担を減らす工夫も入れました。医学的な内容に関わる部分だけ色を付けて渡し、言い回しの調整はこちらで引き受けます。院長に見てほしいのは、事実として正しいかどうかの一点だからです。
作業の進め方も決めました。原稿は担当のスタッフが下書きし、院長が診察の合間に確認します。一本あたり十五分ほどで見られるよう、確認してほしい点を先にまとめて渡す形にしています。
医療広告等ガイドラインの範囲で書ける内容への置き換え
既存の記事を見直すと、規制に触れそうな表現がいくつか見つかりました。効果を言い切る書き方や、他院と比べて優れていると読める表現です。こうした部分は、診療の方針や対応できる範囲を説明する書き方に置き換えました。判断に迷う表現は、指針とQ&Aが公開されている厚生労働省のページで、そのつど確かめています。

患者さんの体験談を載せる案も出ましたが、広告に当たり禁止されるため見送っています。代わりに、診療の流れや、よく受ける質問への答えを充実させました。読む人が知りたいのは、他人の感想よりも、自分が行ったときに何が起きるかだったりします。
自由診療について書く場合は、さらに条件が加わります。広告可能な事項の限定が解除されるための要件として、問い合わせ先を明示することに加え、自由診療では通常必要とされる治療の内容や費用、主なリスクや副作用についての情報提供が求められます。この医院では自由診療の案内は限られていましたが、書くときはこの形をそろえることにしました。
記事から診療案内と予約へつなぐ導線の整理
記事の中身が整ってきたら、次は道をつなぐ作業です。せっかく読んでもらえても、次に進む先が見えなければ、そこで終わってしまいます。
とはいえ、どの記事にも同じ予約ボタンを並べればいいわけではありません。読んでいる人の段階に合わせて、次に見せるものを変えていきました。調べ始めたばかりの人に予約を迫れば、たいてい閉じられてしまいます。逆に、受診を決めかけている人に案内が無ければ、せっかくの気持ちが途切れてしまいます。どちらも、もったいない話です。
記事の中の案内文と診療案内ページへの内部リンク
内部リンクは、記事の末尾にまとめて並べるのをやめました。本文の中で、関係のある話が出てきた場所に置いています。診療時間の話が出てくる段落からは診療案内のページへ、子どもの受診の話が出てくる段落からは小児科の案内へ。

リンクの文言も見直しました。「詳しくはこちら」という書き方をやめ、リンク先に何が書かれているのかが分かる言葉にしています。押させるためではなく、読む人がその先に進むかどうかを自分で決められるようにするためです。
リンクの数も増やしすぎないようにしました。一つの記事に五つも六つも置くと、どれも押されません。本当に進んでほしい先を一つか二つに絞りました。そのほうが、結果としてよく押されるようになりました。
診療案内のページ自体にも手を入れました。診療時間の表だけでなく、初めての人の流れ、持ち物、駐車場や自転車置き場の場所まで。記事から進んできた人が、そこで知りたいことを終えられるようにしています。
記事の末尾の予約や問い合わせの案内
記事の末尾には、読んでいる人の段階に合わせた案内を置きました。調べ始めの段階の記事には、受診の目安を示したうえで、気になるときは相談してほしいという一文と診療案内へのリンク。受診を考えている段階の記事には、予約の入り口を直接置いています。
案内の文言も、医療の記事にふさわしい形に整えました。受診をあおるような言い方はしません。判断するのは読む人です。こちらは材料を渡すところまで、と決めておくと、書き方も自然に定まります。
電話をかけたい人のための導線も残しました。高齢の患者さんや、急いでいる人は電話のほうが早い。画面の下に電話のボタンを置き、診療時間外だと分かる表示も添えています。
医療業界の人手不足でも続けられる更新の体制と費用
ここまで書いてきたことは、手が空いていれば誰でもできる話かもしれません。問題は、医院にそんな余裕がないことです。実際、この医院でも人手はぎりぎりでした。
続けられる形にするために、何を院内でやり、何を外に出すのかを先に決めました。ここを曖昧にしたまま始めると、たいてい三か月で止まります。止まる理由は、やる気ではありません。診療が忙しくなった週に、後回しにできる仕事から順に消えていくだけのことです。だからこそ、消えない形に落としておく必要がありました。
院内の作業時間を抑えた役割分担
作業を、医院の中でしかできないものと、外に出せるものに分けました。
| 分担 | 受け持つ作業 | 分けた理由 |
|---|---|---|
| 院内 | 院長による内容の確認、受付での来院経路の聞き取り、月に一度の振り返り | 医院の中にいる人にしかできない |
| 外部 | 既存記事の仕分けと書き直しの下書き、サイトの改修、計測の設定 | 手間はかかるものの、一度整えれば形が残る |
時間の目安も決めました。院長は週に三十分、担当のスタッフは週に一時間。これを超えそうなときは、作業の量を減らすか、外に出す範囲を広げるか、どちらかを選ぶことにしています。時間が足りないまま気合いで進めると、診療のほうに影響が出てしまいますから。
見直しにかけたSEO対策の費用と月額の目安
費用の考え方も、最初にそろえておきました。新しく記事を増やす費用を減らし、その分を既存記事の見直しと、診療案内のページの作り直しに回すという整理です。
毎月の額そのものは、大きくは変えていません。内訳が変わっただけです。これまでは新しい記事を三本書く費用でしたが、見直しの期間は、既存記事の書き直しと計測まわりの作業に充てました。
外に出す作業の費用は、月ごとの定額にしました。作業が少ない月と多い月がありますが、ならしておくほうが院内で承認を取りやすいからです。医院の会計は年度で動くので、見通しが立つ形にしておくと話が早く進みます。
広告費については、すぐには減らさない判断をしました。検索からの新患が増えるまでには時間がかかります。先に広告を止めてしまうと、その間に来てくださる患者さんが減ってしまいます。効果が見えてきた時点で、少しずつ調整していく形にしました。
記事の見直し後に表れた医院の集患の変化
ここから先の数値は、複数の支援をもとに再構成したモデルケースの一例で、実在する医院の実績ではありません。医院の受診は季節によって大きく動くため、前の年の同じ月と比べる形で見ています。
見た数字は、検索からの流入、記事から診療案内のページへ進んだ割合、そして受付で聞き取った来院のきっかけ。この三つを毎月同じ形で記録しました。数字は、そろえて並べるまでが仕事です。月によって集計の仕方が変わると、増えたのか減ったのかさえ分からなくなってしまいますから。
検索からの流入と記事の読まれ方の変化
流入の総数は、実は大きく変わっていません。重複した記事を整理した分、下がった月もあったほどです。ここだけを見ていたら、うまくいっていないと判断していたでしょう。
変わったのは中身でした。受診を考えている段階の言葉で入ってくる人が増え、診療案内のページへ進む割合が上がっていきます。半年を過ぎたころから、その動きがはっきりしてきました。
記事の読まれ方も変わりました。受診の目安や診察の流れを書き足した記事は、最後まで読まれる割合が高くなっています。書き足した部分が、ちょうど読む人の知りたいことだったのでしょう。
新患数と来院のきっかけの変化
受付の聞き取りでは、「ホームページを見て」と答える新患が、取り組み前のおよそ二倍になりました。全体の新患に占める割合でいうと、一割ほどだったものが二割台まで上がっています。
ポータルサイトや広告からの新患は、大きくは減っていません。自院のサイトからの分が、そこに上積みされた形です。
受付のスタッフからは、問い合わせの電話の中身が変わったという話も出ました。診療時間や持ち物を尋ねる電話が減り、症状を伝えて相談したいという電話が増えたそうです。サイトで済むことはサイトで済ませてもらえた、ということでしょう。
もう一つ、院長が喜んでいたのは、初診の説明が短くなったことでした。サイトで診察の流れを読んでから来る人が増え、受付や診察室での説明が減ったといいます。集患の数字には表れない変化ですが、現場の負担は確かに軽くなりました。
成果が数字に表れるまでにかかった期間
動きが見え始めるまでには、三か月から半年ほどかかりました。この期間は、数字の上ではほとんど何も起きません。むしろ、記事を整理した分だけ流入が下がる時期もあります。
ここで手を止めてしまうと、それまでの作業が無駄になってしまいます。だからこそ、始める前に「三か月は動かない」と伝えておきました。先に言っておくと、下がった月の会議でも説明のやり直しから始めずに済みます。
一年を通して見ると、伸びが大きかったのは、受診を考えている段階の言葉で入ってきた人からの新患でした。数としては多くありませんが、受診につながる割合が高い。医院の規模を考えると、この形の伸び方がいちばん現実的でした。
医院の集患で記事の量より役割の見直しが効いた理由
振り返ると、効いたのは記事を増やしたことではありません。一本ずつの記事に役割を決めて、読んだ人が次に進める道をつないだことでした。派手さはありませんが、これが数字を動かしています。
役割を決めたことで、記事に足すべき内容がはっきりしました。調べ始めの人には受診の目安を、受診を考えている人には診察の流れと予約への道を。何を書けばいいか迷わなくなったぶん、作業も速くなります。
院長の言葉を入れたことも、想像以上に効きました。読む人からすれば、その医師がどんな考え方で診ているのかを、行く前に知れるわけですから。診察室で実際に話している内容は、どこかで読める一般論とは手触りが違います。同じ説明でも、だれの経験から出た言葉なのかが見えると、受け取り方は変わるのでしょう。
一方で、効かなかったこともあります。症状や病名の言葉を狙って記事を増やす作業は、読まれはするものの受診には結びつきませんでした。記事の末尾の案内文を何度も書き換える作業も、読んでいる人の段階が合っていなければ、違いはほとんど出ません。
順番にも意味がありました。診療案内のページを先に整えたから、記事からつないだときに、進んだ先で知りたいことに答えられたのです。逆の順番で進めていたら、リンクを増やしただけで離脱が増えていたかもしれません。
もう一つ挙げるとすれば、広告規制の線引きを最初に確かめたことでしょう。書いてから直すのと、書く前に線を知っておくのとでは、かかる手間がまるで違います。体験談やビフォーアフター写真に頼らなくても、診察の流れや受診の目安といった、読む人の役に立つ材料は院内にいくらでもありました。
自院の記事を見直すときに最初に確かめたいこと
同じように、記事は出しているのに新患が増えないという医院で、どこから確かめればよいのかを整理しておきます。どれも、大きな改修を決める前に分かることばかりです。
人手が限られていても進められるよう、着手の順番も書いておきます。全部を同時に変えようとすると、たいてい途中で止まってしまいますから。一度に一つ。効果を確かめてから次へ。遠回りに見えて、この進め方がいちばん早いというのが、いくつもの医院を見てきての実感です。
最初に確かめる来院経路と記事の役割
手元で確かめられるのは、この三つです。
- 新患の来院経路
受付で聞き取れているか、その記録を月ごとに出せるか。出せないのであれば、そこを整えるところが最初の作業になります - 既存の記事の役割
この記事は誰のどの段階に向けたものか、読み終えた人にどこへ進んでほしいのか。一覧にしてみると、役割の重なりや抜けが見えてきます - 書き手と確認した人の明示
医療の情報では、だれが書いたのかが読む人の判断に関わります。院長の確認を入れる仕組みがないなら、その形を先に作っておくほうが安全です
役割を書き出すときは、記事の本数が多くても構いません。上位の二十本ほどから始めれば十分です。読まれている順に並べて、上から役割を書き込んでいく。それだけで、手を付ける場所がはっきりしてきます。
少人数の体制でも続けられる着手の順番
着手は、受診に近いところから前へさかのぼる形が進めやすくなります。
- STEP 01
診療案内のページの整備
初めての人が知りたいことに答えられる形に整えます。記事に手を入れるより先に、ここから始めます
- STEP 02
既存記事への役割の追加
読まれていて受診につなげられる記事に、受診の目安や診察の流れを書き足し、診療案内へのリンクを本文の中に置きます。ここまでで、今ある流入から受診に進む割合が変わってきます
- STEP 03
新しい記事の追加
どの言葉から来た人が受診まで進んだのかが見えてから書くほうが、限られた本数を有効に使えます
毎月の振り返りの時間を先に確保しておくと、次に書くものは自然に決まっていくものです。
まとめ
この医院は、記事を増やす方向ではなく、一本ずつの記事に役割を決めて、受診の判断に必要な内容を足していくことで、自院のサイトからの新患を増やしていきました。
取り組みの中心は、物差しを順位から新患数へ変えたこと、調べ始めの段階と受診を決める段階で記事の役割を分けたこと、医療広告等ガイドラインの範囲で書ける形に整えたこと、そして記事から診療案内と予約へ進む道をつないだことです。
成果が数字に表れるまでには半年ほどかかり、途中には流入が下がる時期もありました。前の年の同じ月と比べる見方と、下がる時期をあらかじめ伝えておくこと。この二つが、続けるうえで効いています。自院に置き換えるなら、まずは新患の来院経路を月ごとに出せるかどうかと、いちばん読まれている記事に役割があるかどうかから確かめてみてください。









