インフラ業界のSEO事例、停電の電話を減らしたお知らせページの作り方

この記事では、停電のたびに電話が鳴り続けていた電力会社が、お知らせページを作り直して問い合わせを減らすまでを、私、柏崎剛がお伝えします。これまでの支援経験から再構成したモデルケースです。停電の日の検索語と電話の質問を一枚の表で突き合わせ、同じURLのページを書き換え続け、次の更新予定まで書き添えた流れを追います。書き方より先に置き場所を見直すべきだという実感も交えました。停電や断水の知らせを任されている担当者に向けた事例です。

停電が起きるたびに、電話窓口が鳴りやみません。電気やガス、水道のように生活を支える仕事をしている会社でWEBを任されていると、この光景に心当たりがあるのではないでしょうか。ホームページにお知らせは出しています。それなのに、電話で同じことを何度も聞かれます。お知らせが、必要としている人の手元に届いていないのです。

ある地域で家庭や事業所に電気を届けている電力会社のWEB担当者が向き合ったのも、まさにこの状況でした。手を入れたのは、停電のお知らせページの置き場所と書き方です。停電のさなかに人が何を検索し、電話で何を聞いているのか。その二つを突き合わせて、聞かれる前に答えが見つかるページへ作り直しました。インフラ業界のSEOは、売上を伸ばすための集客とは少し違う顔を持っています。困っている人を、いちばん早く答えにたどり着かせること。

停電のたびに電話が鳴り続けていた、インフラ業界の電力会社のお知らせページ

まずは、手を入れる前のこの電力会社の様子から見ていきます。WEB担当者が最初にしたのは、ページを直すことではありませんでした。停電が起きたときに、社内の誰が、どこに、どんな情報を出しているのかを、保安の部門と広報、電話窓口の三か所に聞いて回ることです。お知らせの出し方と電話の中身は、同じ一つの流れの表と裏だと考えたからです。

あらかじめ、この記事での言葉の使い方をそろえておきます。「お知らせページ」は、会社のホームページの中で停電について知らせているページのことです。停電には、電線の張り替えや設備の点検のために日時を決めて電気を止める工事による停電と、事故や悪天候で突然起きる突発の停電があります。この会社では、どちらのお知らせも同じ「お知らせ」の一覧に並べていました。読む人から見れば、どちらも「電気が止まる」という同じ出来事です。けれども、知りたいことはかなり違います。この違いが、後の作り直しの軸になりました。

聞いて回った結果、浮かび上がったのは、情報を出す側と受け取る側で、見ている時間の流れが違うということでした。以下では、お知らせの出し方と、電話窓口に届いていた問い合わせを順に見ていきます。

取り組む前の停電のお知らせの出し方

工事による停電は、数日前に対象の地域へチラシを配り、同じ内容をホームページの「お知らせ」一覧にも載せていました。載せ方は、日付と短い題名の一行に、詳しい内容のPDFを添える形です。PDFには、停電する日時と地区、工事の目的が、チラシと同じ体裁で書かれていました。

突発の停電では、トップページの上部に一行の告知を出していました。どの地区で停電が起きていて、復旧に向けて作業していることを知らせる短い文です。状況が変わるたびに、担当者が新しいお知らせを作って差し替えます。古いお知らせは一覧に残り、新しいお知らせは別のページとして増えていきました。

一つひとつの作業は、どれも丁寧でした。チラシと同じPDFを載せれば、内容の食い違いは起きません。状況が変わるたびに新しく出せば、記録も残ります。社内の確認の流れにも、それぞれ理由がありました。問題は、こうした出し方が、停電のさなかにスマートフォンで答えを探している人の動きと、ほとんど噛み合っていなかったことでした。

電話窓口に寄せられていた問い合わせの中身

電話窓口の記録を読み返すと、問い合わせはいくつかの型に収まっていました。多いものから並べると、次のとおりです。

  • 復旧の見込み
    いつ電気が戻るのかという質問。件数はこれがいちばん多い
  • 停電の範囲
    自分の家や店が、その停電の範囲に入っているのか
  • 自宅だけかどうか
    自分の家だけが消えているのか、近所も消えているのか
  • 工事による停電の日時
    予定されている停電の日時と地区の確かめ

どれも、ホームページのどこかに答えがあるか、少なくとも答えられる情報でした。それでも電話が来るのは、探しても見つからない、見つかっても古いかもしれないと感じた人が、確実に答えてくれる窓口を選んでいるのだと考えられます。窓口の担当者に話を聞くと、同じ説明を一日に何十回も繰り返す日があるといいます。

困ったのは、電話がつながりにくくなることでした。停電の最中には、電線が垂れ下がっている、焦げたにおいがするといった、すぐに人を向かわせるべき連絡も入ります。復旧の見込みを尋ねる電話で回線が埋まると、そうした連絡が後回しになりかねません。WEB担当者がこの取り組みの目標を電話を減らすことに置いたのは、窓口の負担のためだけでなく、本当に急ぐ連絡を通すためでもありました。

インフラ業界の電力会社が抱えていた、停電のお知らせが検索で見つからない課題

電話の中身が見えたところで、WEB担当者は検索の側から同じ出来事を見直しました。使った材料は、Google Search Console で停電の日に表示された検索語と、そのときに検索から来た人がどのページに着いていたかの記録です。電話の記録と時刻をそろえて並べ、停電の最中に検索した人がどこで迷っていたのかを確かめました。

順番には理由があります。先に電話の中身を見ておいたことで、検索語を読むときに「この人は何を知りたかったのか」が分かりやすくなりました。電話で聞かれていることと、検索で探されていることは、同じ人の同じ疑問である場合が多いはずです。両方を見比べれば、ページのどこに答えが無かったのかが浮かび上がります。

並べてみて分かったのは、問題が二つの層に分かれていたことでした。一つは、お知らせが置かれている場所と形の問題。もう一つは、書かれている言葉の問題です。

PDFと日付順の一覧に埋もれていた停電のお知らせ

停電の日の記録を見ると、検索から来た人の多くは、目当てのお知らせではなく、トップページや過去のお知らせに着いていました。中には、何か月も前の工事による停電のお知らせを開いている人もいます。地区の名前と「停電」を組み合わせて検索した結果、同じ地区の古いお知らせが表示されていたのです。

日付順の一覧は、社内から見れば分かりやすい並べ方です。けれども、停電のさなかの人にとっては、最新の一件にたどり着くまでに、いくつもの古いお知らせをかき分けることになります。突発の停電では、状況が変わるたびにお知らせが増えるので、同じ停電について複数のページが並ぶこともありました。どれが最新なのか、開いてみるまで分かりません。

「最新の一件にたどり着けない」という見出しの下に、スマートフォンの「お知らせ」一覧と困っている人を描いた図。一覧にはPDFの付いた工事の停電のお知らせと同じ停電の更新のお知らせが混ざって並び、どの行にも「?」が付いている。人物は「いつ戻るの?」「うちは対象?」と迷っている

PDFにも別の壁がありました。スマートフォンで開くと、文字が小さく、拡大しないと日時も地区も読めません。電池の残りを気にしながら探している人にとって、この手間は小さくありません。チラシと同じ体裁で正確に伝えるための工夫が、急いでいる人には読みにくさになっていたのです。

検索する人の言葉と社内の言葉のずれ

もう一つの層は言葉でした。お知らせの題名には、配電線工事、高圧線、需要家といった、社内で使っている言葉が並んでいました。工事の内容を正確に表した言葉で、社内の書類や保安の部門とのやり取りでは欠かせません。

一方で、停電の日の検索語は、まったく違う形をしていました。目立ったのは、地区の名前と「停電」に、「今」「いつまで」「復旧」が続く組み合わせです。工事による停電の前には、「停電 工事 〇月〇日」のように日付を入れて確かめる検索もありました。探している人の頭にあるのは、いつ、どこで、自分は関係あるのか、の三つです。

この言葉のずれ自体は、どの業界でも起きることです。この会社で特に効いていたのは、時間の言葉が抜けていたことでした。お知らせには発生した時刻は書かれていても、いまがどういう状況で、次に何が分かるのかが書かれていません。「今」や「いつまで」で探している人に、ページが答えていなかったのです。社内の言葉を消す必要はありません。ただ、題名と冒頭には探す人の言葉を置き、社内の言葉はその後ろに回す並べ替えが要ることが、ここで見えてきました。

SEOプロフェッショナル
柏崎剛
柏崎剛
お知らせページを見直すときに私が最初に確かめるのは、停電の日に検索から来た人が、どのページに着いているかです。目当てのページより、トップページや古いお知らせに着いている人が多いなら、書き方を磨く前に置き場所を直すほうが先です。書き方の工夫は、見つけてもらえてから効き始めます。

停電の最中に検索される言葉と電話の質問の突き合わせ

課題が見えたので、次はページに何をどの順で書くかを決める段階です。電話を減らしたいなら、電話で聞かれていることに答えればよいはずです。理屈は単純ですが、何を、どの順で、どの粒度で書くかは、記録を読まなければ決められません。WEB担当者は、ここで新しく大がかりな調査をしたわけではありません。すでに手元にあった二つの記録、つまり停電の日の検索語と電話窓口の問い合わせの記録を、同じ物差しで並べ直しました。

進める前に決めたことがあります。検索語と電話の質問を、別々の表にしないことです。検索語は検索語、電話は電話で集計すると、それぞれもっともらしい傾向は出ます。けれども、ページに書くべきことを決めるには、同じ疑問が検索と電話のどちらに現れているかを一度に見たほうが早いと考えました。そこで、疑問の種類を行に、検索語の例と電話の問い合わせの例を列にした一枚の表を作っています。

材料の集め方にも少し工夫が要りました。電話窓口の記録は、応対した担当者が自由に書いたメモの形で残っていて、そのままでは数えられません。WEB担当者は、次の順で材料をそろえています。

  1. STEP 01

    停電の日を選ぶ

    過去の大きめの停電の日の記録を選ぶ

  2. STEP 02

    電話の記録を振り分ける

    その日の記録を一件ずつ読み、疑問の種類ごとに振り分ける

  3. STEP 03

    検索語を拾う

    Search Console で停電のあった日に期間を絞り、地区の名前や「停電」を含む検索語を拾う

手間はかかりましたが、振り分けの作業そのものが、窓口の担当者が何に時間を取られているかを知る機会にもなりました。

表を埋めていくと、検索と電話はほとんど同じ疑問を抱えていました。

疑問の種類検索での現れ方電話での現れ方
復旧の見込み地区の名前と「停電」に「いつまで」「復旧」が続くいつ電気が戻るのか
対象の地域地区の名前と「停電」に「今」が続く自分の家や店が範囲に入っているのか
自宅で確かめること停電の直後に先に現れる自分の家だけか、近所も消えているのか
停電の理由や工事の予定「停電 工事 〇月〇日」のように日付を入れる工事による停電の日時の確かめ

違いがあったのは、疑問の出てくる順番でした。停電が起きた直後は、自分の家だけなのかを確かめる疑問が先に来ます。地域全体の停電だと分かると、次はいつ戻るのかに関心が移ります。電話の記録の時刻と検索語の時刻を合わせて見ると、この移り変わりがはっきり読み取れました。

停電の日の検索語は Search Console で後から振り返れますが、地区の名前と「停電」で調べた人が、そのあと何を続けて知りたくなるのかまでは見えにくいものです。再検索キーワード調査ツールは、ある語で調べた人が次に何を知りたくなるかを一覧にできるので、「停電」に続く疑問の移り変わりを、停電の起きていない日のうちに下調べできます。突き合わせの表に、電話の記録には出てこない疑問の行が足りていないかを確かめる材料にもなります。

もう一つ見えてきたのは、検索で答えが見つからなかった人が、そのまま電話をかけているらしいことです。停電の発生から少し遅れて検索語が増え、さらに少し遅れて電話が増えていきます。検索で探して、見つからず、電話をかけるという流れです。もちろん、記録だけで一人ひとりの行動まで言い切ることはできません。ただ、検索の段階で答えが見つかれば、電話をかける理由のいくつかは消えるはずだ、という見立てには十分な手がかりでした。

こうして、お知らせページに書くことと、その順番がほぼ決まりました。疑問が出てくる順に答えを並べること。そして、自分の家だけの停電かどうかを確かめる方法を、地域全体の情報よりも手前で示すことです。後者は、電話窓口の担当者が繰り返し口頭で説明していた内容でもありました。窓口で毎日話していることが、そのままページに書くべきことの一覧になっていたのです。

ここで気をつけたのは、表に並んだ疑問をすべて同じ重さで扱わないことです。件数は少なくても、命や安全に関わる連絡、たとえば電線の異常の連絡は、ページで答えるのではなく、すぐに電話してほしい内容です。表の中でその行には印を付け、ページではむしろ電話番号を目立たせる場所として扱うことにしました。電話を減らすための作り直しだからこそ、減らしてはいけない電話を先に見分けておきました。この線引きが、後の作り直しの土台になりました。

電話の質問に先回りして答えるお知らせページへの作り直し

書くことと順番が決まったので、いよいよお知らせページを作り直します。WEB担当者が最初に決めていたのは、お知らせの中身の正確さは保安の部門と広報が持っている、という前提を崩さないことでした。ページの形は変えても、書いてある事実の出どころは変えません。そのうえで、見つけやすさと読みやすさに手を入れる方針です。

進めた順番は、ページの置き場所、書く順番、停電の種類ごとの書き分けです。置き場所を先にしたのは、どれほど中身を整えても、検索で見つからなければ電話は減らないからです。書く順番はその次。停電の種類ごとの書き分けは、置き場所と順番が決まってから、工事による停電と突発の停電それぞれに当てはめていきました。

全体を通して分かったのは、新しく足した情報がほとんど無かったことです。復旧の見込みも、対象の地区も、自宅で確かめることも、もともと社内のどこかにありました。変えたのは、それを載せる場所と、並べる順番と、時間の書き添え方でした。

停電中もずっと同じURLで見られるページ

置き場所について決めたのは、突発の停電の情報を、地域ごとに一つの決まったページで見せることです。状況が変わるたびに新しいお知らせを作るのをやめ、同じページの中身を書き換えていく形にしました。ページのURLは停電が起きていないときも変わりません。停電が無いときは、いまは停電の情報が無いことと、最後に情報を更新した時刻を表示しています。

同じURLにしたことには、いくつもの利点がありました。検索結果に出るページが一つにまとまるので、どれが最新かを迷わせません。地域の人がブックマークしておけば、次の停電のときにもそこを開けば済みます。自治体や地域の団体がSNSで案内するときにも、毎回違うURLを探す必要がなくなりました。

「〇〇町の停電情報(いつも同じURL)」のページを描いた図。上部に「いまの状況」「復旧の見込み」「対象の地区」「更新時刻/次の更新予定」の欄、下のほうに「過去の停電の記録」が並ぶ。検索・ブックマーク・SNSの三方向から矢印が同じページに集まり、下部に「どこから来ても、いまの情報に着く」の注釈がある

過去の停電の記録は、同じページの下のほうに短くまとめて残すことにしました。記録を消してしまうと、後から確かめたい人が困ります。ただし、いま起きている停電の情報より上には決して置きません。ページを開いた瞬間に目に入るのは、常にいまの状況です。

会社のSNSでの知らせ方も、この決まったページに合わせました。停電が起きたときの投稿には、毎回同じページへのリンクを添えます。投稿の文面は短くし、詳しいことはページで見てもらう形です。SNSの投稿は流れていきますが、リンク先のページは書き換えられていくので、どの投稿から来ても最新の情報に着きます。

復旧の見込み、対象の地域、自宅で確かめることを並べる順番

ページの中身は、突き合わせの表で見えた疑問の順番に合わせて並べました。

いちばん上に置いたのは、いまの状況の一文と、復旧の見込みです。見込みが立っていないときは、立っていないことと、いつごろ次の情報を出すかを書きます。見込みが分からないことをそのまま書くのは、勇気の要る判断でした。それでも、何も書かないよりは、分からないと書いてあるほうが、読む人は電話をかけずに待てます。

対象の地域は、地図の画像だけでなく、町名を文字で並べました。画像だけでは、検索で町名から探した人にページが見つかりにくく、読み上げの機能を使う人にも伝わりにくくなります。文字で並べておけば、自分の町名をページの中で探すこともできます。

自宅で確かめることは、対象の地域より後ろではなく、すぐ近くに置きました。近所の家の明かりや街灯を見ること、自宅のブレーカーを確かめることなど、窓口で繰り返し説明していた内容です。自分の家だけの停電なら、確かめる先が変わります。そのことが分かるだけで、かけなくてよい電話がひとつ減ります。

工事による停電と突発の停電で分けた書き方

工事による停電のお知らせは、PDFをやめて、ページの本文に書く形に変えました。題名は、社内の工事の名前ではなく、停電する日付と地区と時間帯が先に来る形です。工事の名前や目的は、その下に添えています。日付を入れて検索する人に、題名だけで答えが伝わるようにするためです。

突発の停電は、前の節の地域ごとの決まったページに集めました。二つの停電の扱いの違いは、次のように整理できます。

停電の種類状況の変わり方ページの形
工事による停電日時と地区が先に決まっている一件ずつのページ(一件ずつでも迷わせない)
突発の停電状況が刻々と変わる地域ごとの決まったページを書き換え続ける

性質が違う二つを、同じ「お知らせ」の一覧に並べていたことが、そもそもの混乱のもとでした。

二つのページは、互いに行き来できるようにしてあります。地域ごとのページには、その地域で予定されている工事による停電へのリンクを置き、工事のページには、当日に予定が変わった場合の情報は地域ごとのページで出すことを書き添えました。工事による停電が予定より長引いたときに、どこを見ればよいかで迷わせないためです。

終わった工事のページの扱いも決めました。工事が終わったら、ページの冒頭に終了したことを書き添え、題名にも終了の印を付けます。そのうえで、一定の期間が過ぎたものは一覧から外しています。終わった工事のページが検索で上に残っていると、次の停電のときに古い日付のお知らせを開かせてしまうからです。同じ地区で次の工事が予定されていれば、終わったページからそのページへ案内しています。

SEOプロフェッショナル
柏崎剛
柏崎剛
終わった工事のページを一覧から外すときも、URL そのものは消さずに残しておくことを勧めています。工事の前に配ったチラシや、地域の掲示板の案内からたどって来る人がいるからです。終了の印を付けて次の予定や地域ごとのページへ案内しておけば、古い案内から来た人も行き止まりになりません。

正確さを守りながら早く載せるための社内の段取り

ページの形を整えても、中身の更新が遅ければ意味がありません。停電の最中の情報は、数十分たてば古くなります。かといって、急ぐあまり間違った見込みを載せれば、電話はかえって増えますし、会社への信頼も損なわれます。WEB担当者が次に取り組んだのは、正確さと早さを両立させる社内の段取りでした。

ここで先に決めたのは、確認の段階を減らすのではなく、確認する中身を減らすことです。保安の部門も広報も、それぞれの確認には理由があります。どちらかを飛ばすのは危うい。そこで、毎回の確認で見なければならない文章の量そのものを小さくすることを考えました。

順番としては、まず更新の決まりを作り、次に更新時刻と次の更新予定の書き方を決めています。決まりが先にあれば、書き添える時刻もその決まりに沿って運用できるからです。やってみて分かったのは、確認する中身が小さくなるほど、確認する側の心理的な負担も軽くなることでした。

保安部門と広報の確認を短くした更新の決まり

更新の決まりの中心は、決まった欄を埋める形のひな形です。保安の部門が現場の情報をもとに埋めるのは、次の四つの欄です。

  • いまの状況
    停電が続いているのか、作業に入ったのか、復旧したのか
  • 対象の地区
    地図ではなく、町名の文字で書く
  • 復旧の見込み
    確かな時刻が言えないときは、用意した言い回しから選ぶ
  • 次の更新予定
    状況に変化が無くても、この時刻には更新する

欄の外の文章、たとえば自宅で確かめることや連絡先は、あらかじめ広報が確認を済ませた固定の文にしておきました。

こうすると、停電のたびに広報が確認するのは、欄に入った短い言葉だけになります。言い回しが読む人を不安にさせないか、社外に出してよい表現か。その二点に絞って見ればよいので、確認は数分で終わるようになりました。保安の部門の側も、文章を一から書く必要がなくなり、事実の確認に集中できます。

見込みの書き方にも決まりを作りました。確かな時刻が言えないときに使う言い回しを、いくつかあらかじめ用意しておき、状況に合うものを選ぶ形です。見込みが立たないことを、毎回その場で言葉を探して書いていたころは、ここで時間がかかっていました。言い回しを事前に決めておいたことで、早さと慎重さを両方とも保てるようになったのです。

決まりを作っただけで、本番の停電を待ったわけではありません。WEB担当者は、過去の停電の記録を使って、ひな形を埋めて公開するまでを、保安の部門と広報と一緒に一度通しで試しています。実際にやってみると、欄の名前が保安の部門の言葉と合っていない、見込みの言い回しが足りない、といった点が見つかりました。本番の前に直せたことで、最初の停電から決まりどおりに回せています。

更新時刻と次の更新予定の書き添え

ページのいちばん上には、更新した時刻と、次に更新する予定の時刻を必ず書き添えることにしました。この小さな書き添えが、思っていた以上に効きました。

更新時刻が無いと、読む人はそのページの情報がいつのものか分かりません。数時間前の情報かもしれないと感じれば、確かめるために電話をかけます。更新時刻があれば、少なくとも何分前の情報かは分かります。さらに次の更新予定があれば、その時刻まではページを見て待てばよいと分かります。

WordPress でお知らせページを運営しているなら、Kashiwazaki SEO Published & Last Updated Dates で、投稿の公開日と更新日を本文の前後に自動で表示できます。日付の書式を自由に指定できるので、時刻まで含む書式にしておけば、同じページを書き換えるたびに、いつの情報かがページに出ます。HTTP の Last-Modified ヘッダーも自動で返すため、更新した時点を読む人だけでなく機械にも伝えられます。次の更新予定は手で書き添えることになりますが、更新時刻の書き忘れは防げます。

次の更新予定は、状況に変化が無くても、その時刻には更新することにしました。変化が無いことも一つの情報だからです。予定の時刻を過ぎても更新されないページは、かえって不安を呼びます。WEB担当者は、予定の時刻を守るために、保安の部門と連絡を取る時刻もあわせて決めておきました。ページの更新が、社内の連絡の節目にもなったわけです。

復旧したときの書き方も、あわせて決めました。復旧を知らせるだけでなく、復旧後も自宅の電気がつかない場合に確かめることと連絡先を、同じページの上のほうに残します。地域全体が復旧しても、家によってはブレーカーが落ちたままになっていることがあるからです。復旧の知らせを出したあとの電話は、たいていこの確認でした。

SEOプロフェッショナル
柏崎剛
柏崎剛
見込みの言い回しは、用意して終わりにせず、使ったあとに窓口へ届いた電話と照らし合わせて見直してみてください。同じ言い回しのあとに同じ質問の電話が続くなら、その言い回しでは読む人の疑問に答えきれていないということです。言い回しもまた、ページと同じく、聞かれたことから育てていくものだと考えています。

インフラ業界のSEOで停電の電話が減ったお知らせページの変化

お知らせページを作り直してから、何が変わったのか。ここでは、問い合わせの件数と検索からの訪問の動き、そして電話窓口の担当者の変化という二つの面から見ていきます。停電はいつ起きるか分からないので、変化を確かめる機会は思ったより少なく、比べられる規模の停電を待つ必要がありました。

実際、停電は一つの家から見れば頻繁な出来事ではありません。電力広域的運営推進機関の報告書によると、2024年度の全国の低圧電灯需要家の1需要家あたりの年間停電回数は0.13回で、そのうち0.11回が事故による停電です。工事による停電よりも、予定の立たない停電のほうがずっと多いことも分かります。

出典: 電力広域的運営推進機関「電気の質に関する報告書(2024年度実績)」(2025年12月公表、2026年2月一部訂正)

めったに起きないからこそ、一回ごとの停電で何が変わったかを丁寧に見る必要がありました。

比べるときに決めていたのは、停電の規模がおおむね同じものどうしで比べることです。対象の戸数や停電の長さが違えば、電話の件数も当然変わります。規模の近い停電を前後で選び、そのうえで件数と検索の動きを見ました。

なお、この先に出てくる数値は、モデルケースとしての一例です。地域の広さや停電の起こり方、もともとのお知らせの出し方によって、変化の大きさは変わります。自社と比べるときは、増え方や減り方の向きと、どこが先に動いたかを参考にしてください。

問い合わせ件数と検索からの訪問の動き

先に動いたのは、検索からの訪問でした。停電の日に検索から来た人が着くページが、トップページや古いお知らせから、地域ごとの決まったページへとまとまっていきました。地区の名前と「停電」を組み合わせた検索で、最新の情報のページが表示されるようになったためです。

ページの見られ方にも特徴が出ました。停電の最中、同じ人が時間をおいて何度もページを訪れているらしい動きが、次の更新予定の時刻のあたりに集まっていたのです。更新予定を書き添えたことで、読む人がその時刻に合わせて見に来ていたと考えられます。電話で確かめる代わりに、ページを見に来る習慣ができ始めていました。

WordPress で運営しているなら、Kashiwazaki SEO Super Access Log でサーバー側のアクセスの記録を残せます。どの URL に、どこから来て、どのステータスを受け取ったかが一件ずつ残り、期間を24時間に絞って見られるので、停電の当日に地域ごとのページへ検索や SNS からどう人が集まったかを追えます。更新予定の時刻のあたりに訪問が集まっているかを確かめるのにも向いています。

電話の件数は、その後から変わりました。一例として、規模の近い停電で比べると、電話の種類ごとに次のような違いが出ています。

電話の種類(一例)規模の近い停電で比べた変化
復旧の見込みを尋ねる電話おおむね半分ほどに減った
自宅だけの停電かを確かめる電話目に見えて少なくなった

ページで答えるようにした疑問ほど、電話が減っています。

工事による停電でも、似た動きが見られました。日付と地区を入れた検索から、その工事のページに直接着く人が増えています。PDFを開かなくても、題名と冒頭だけで日時と地区が分かるようになったためでしょう。工事の日時を確かめる電話は、もともと件数が多くはありませんでしたが、作り直したあとはさらに少なくなりました。

一方で、減らなかった電話もあります。電線の異常など、すぐに人を向かわせるべき連絡です。これは狙いどおりでした。ページでは電話番号を目立たせ、急ぐ連絡は電話でと書いていたからです。電話の総数が減ったぶん、こうした連絡がつながりやすくなりました。

電話窓口の担当者に生まれた余裕

窓口の担当者の働き方にも変化がありました。同じ説明を何十回も繰り返す日が減り、一本ずつの電話に落ち着いて向き合えるようになったといいます。

電話の中身も変わりました。以前はいつ戻るのかという質問が大半を占めていましたが、作り直したあとは、ページを見たうえでの具体的な相談が増えています。医療機器を使っている家族がいる、店の冷蔵庫の中身をどうするか、といった、個別の事情に合わせた判断が要る相談です。こうした相談こそ、人が受けるべき電話でした。窓口の担当者が一本の電話にかけられる時間が増えたことで、こうした相談にも丁寧に答えられるようになっています。

窓口の担当者からは、ページの改善につながる声も届くようになりました。電話で何度か聞かれたことがあれば、それをページに書き足してはどうかという提案です。窓口とWEB担当者のあいだに、聞かれたことをページに返す流れが生まれました。

この流れを支えるために、電話の記録の取り方も少し変えています。以前は自由に書くメモだけでしたが、応対のあとに疑問の種類を選んで印を付ける欄を足しました。突き合わせの表で使った種類と同じ分け方です。これで、停電のたびに記録を一件ずつ読み直さなくても、どの種類の電話が多かったかがすぐに分かるようになりました。電話を減らす取り組みが、電話の中身からページを育てる仕組みにもなっていったのです。

停電の電話を減らすうえで要になったこと

ここからは、私の立場からこのモデルケースを振り返ります。何が効いたのかをひと言で言えば、お知らせを、出す側の時間ではなく、探す側の時間に合わせて書き直したことでした。

社内の時間の流れは、出来事が起きた順に進みます。停電が発生し、原因を調べ、作業に入り、復旧するという順です。お知らせも、その順で新しいページとして積み上がっていきました。けれども、停電のさなかにいる人の時間は違います。知りたいのは、いま何が起きていて、自分は関係あるのか、いつ戻るのか。その順番です。お知らせを出す順番と、読む人が知りたい順番がずれていたことが、電話の多さの根にありました。

左に「会社の側の時間」として発生・原因の調査・作業・復旧の順に積み上がるお知らせ、右に「停電のさなかにいる人の時間」として「いま何が起きている?」「自分は関係ある?」「いつ戻る?」と問うスマートフォンを持った人を並べた比較図。間に「順番のずれ」の矢印、下部に「探す側の順番に合わせて書く」の注釈がある

同じ出来事でも、どちらの時間に合わせて書くかで、ページの形はまったく変わります。

その意味で、同じURLで見せ続けるという決断は大きかったと感じています。ページを増やせば、記録としては整います。しかし、探す側にとっては、どれが最新か分からないページが増えるだけです。一つのページを書き換え続けることで、検索でも、ブックマークでも、人づての案内でも、同じ場所にたどり着けるようになりました。

次の更新予定を書き添えたことも、地味ながら要になりました。読む人の不安の多くは、情報が無いことよりも、いつ情報が出るのか分からないことから来ています。次の更新の時刻が分かれば、その時刻まで待てます。待てる人は、電話をかけません。

電話の記録を、検索語と同じ表で読んだことも大きかったと思います。電話窓口の記録は、多くの会社で応対の品質を見るために使われているのではないでしょうか。それをお知らせページに何を書くかの材料として読み直したことで、ページに足りないものがはっきりしました。新しい調査をしなくても、読み方を変えるだけで材料はそろっていたのです。

成果の見方についても、一つ学びがありました。電話の総数だけを追っていると、減った理由も、減らなかった理由も見えません。この会社では、電話を疑問の種類ごとに数え、ページで答えるようにした種類の電話が減ったかどうかを見ていました。種類ごとに見れば、どの書き方が効き、どこにまだ答えが足りないかが分かります。次に手を入れる場所も、そこから自然に決まります。

減らしてはいけない電話を最初に見分けておいたことも、忘れてはいけない点です。電話を減らすという目標は、ともすると、すべての電話をページで済ませる方向に走りがちです。けれども、インフラ業界のお知らせページの役目は、答えられることに答え、人が受けるべき連絡を人に届けることにあります。その線引きがあったからこそ、電話の数だけでなく、電話の中身も変わったのだと考えています。

まとめ

停電のたびに電話が鳴り続けていた電力会社が手を入れたのは、停電のお知らせページの置き場所と書き方でした。PDFと日付順の一覧に埋もれたお知らせ、社内の言葉で書かれた題名、時間の情報が抜けた書き方。この三つが、停電のさなかに答えを探す人とのあいだにずれを生んでいました。

直し方は、停電の日の検索語と電話の質問を同じ表で突き合わせ、疑問が出てくる順に答えを並べることから始まりました。突発の停電は地域ごとに同じURLのページで書き換え続け、工事による停電はPDFをやめて日付と地区が先に来る形にしています。社内では、決まった欄を埋めるひな形で確認を短くし、更新時刻と次の更新予定を必ず書き添えるようにしました。急ぐ連絡は電話で、と書いて電話番号を目立たせ、減らしてはいけない電話は残しています。

あなたの会社のお知らせページは、出す側の順番で書かれていないでしょうか。まずは電話窓口の記録を一度読み、いちばん多い質問の答えが、ページのいちばん上にあるかを確かめてみてください。

よくある質問

記事が気に入ったらシェアをお願いします!