公共工事の実績は何十件もあるのに、ホームページから民間の相談はほとんど届きません。公共事業に関わる建設会社でWEBを任されると、多くの人がまずこの壁の前で立ち止まるのではないでしょうか。実績ページはあります。工事の写真も並んでいます。それでも検索から人は来ず、来たとしても問い合わせにはつながりません。
ここで取り上げる建設会社のWEB担当者が手を入れたのは、新しいページを増やすことではありませんでした。すでにあった実績ページの「言葉」を、探している人の言葉に合わせて書き直しただけです。公共事業のSEOというと大がかりな対策を想像しがちですが、出発点は工事名の書き方ひとつでした。
公共事業の入札に頼っていた建設会社の受注の状況
まずは、手を入れる前のこの建設会社がどんな状態だったのかを見ておきます。WEB担当者が最初にしたのは、ページを直すことではなく、会社の仕事がどこから来ているのかを営業と経理に聞いて整理することでした。ホームページの役割は、受注の形と切り離しては決められないからです。
あらかじめ、この記事での言葉の使い方をそろえておきます。「実績ページ」は、会社のホームページの中で手がけた工事を紹介しているページのことです。「発注者」と書くときは、工場や店舗、賃貸マンションの持ち主、施設を建てる事業者といった民間の発注者を指します。国や県、市町村など公共工事を発注する役所の側は「発注機関」と呼び分けます。公共工事の世界では役所を発注者と呼ぶのが普通なので、少しややこしいかもしれません。ただ、この事例で相談を増やしたかった相手は民間の側なので、そちらを主語に置いて話を進めます。
整理してみると、受注の偏りと、ホームページが果たしていた役割の狭さが、同じ根から出ていることが見えてきました。以下では、その二つを順に見ていきます。
売上の大半を公共工事が占め、年度ごとの発注量に左右される経営
この建設会社の売上は、そのほとんどが市や県から受注した公共工事でした。道路の改良、側溝の入れ替え、河川の護岸、学校のグラウンドの整備。地元の発注機関とは長い付き合いがあり、入札に参加すれば一定の割合で落札できていました。経営は安定しているように見えていました。
ただ、年度ごとに見ると波があります。発注機関の予算や計画によって、ある年は大きな工事がまとまって出て、翌年は小さな工事ばかりになります。工事が少ない年には、重機と職人の手が空いてしまいます。社長はこの波を以前から気にしていて、民間の工事を少しずつ増やせないかと考えていました。
国全体の見通しを見ても、民間の工事は小さな市場ではありません。国土交通省の建設投資見通しでは、2026年度の建設投資81兆4,700億円のうち、民間投資が54兆8,700億円と、およそ3分の2を占めています。
ところが、民間の仕事は人づての紹介に頼りきりでした。昔から付き合いのある地元の企業や、知り合いの設計事務所から声がかかったときだけ受けるという形です。相談の入口が人の縁しかないので、増やそうにも増やし方が分からない状態です。そこで「ホームページから相談が来るようにならないか」という話が、WEB担当者のところに回ってきました。
入札参加資格と会社概要を載せるだけだったホームページ
当時のホームページを開くと、トップには会社の写真と経営方針、その下に会社概要がありました。建設業の許可の種類、入札参加資格の登録先、保有している重機や資格者の人数。どれも、発注機関や元請けの会社が「この会社は工事を任せられるか」を確かめるための情報です。
実績ページも、同じ考えで作られていました。年度ごとに、発注機関から受けた工事の名前が並び、その横に工期と発注機関の名前が添えてあります。写真が付いているのは一部だけで、説明文はほとんどありません。入札の書類に添える工事経歴を、そのままホームページに移したような作りでした。
これはこれで筋が通っています。もともとこのホームページは、新しい相談を呼び込むためではなく、すでに取引のある相手が会社の信用を確かめるために作られたものだったからです。問題は、その役割のままで民間からの相談を期待していたことでした。読み手が変われば、同じ情報でも伝わり方は変わります。WEB担当者は次に、実績ページを民間の人の目で読み直してみることにしました。
実績ページがあっても民間からの相談が入らなかった理由
実績ページはあるし、件数も少なくありません。それなのに、なぜ民間からの相談が入らないのか。WEB担当者はこの問いに、三つの材料を並べて向き合いました。Google Search Console で実績ページがどんな検索語で表示されているか、過去に民間から届いた数少ない問い合わせのメールと電話の記録、そして営業担当者が民間の取引先から聞いていた声です。
順番にも理由がありました。検索語を先に見たのは、思い込みで原因を決めないためです。「写真が少ないからだろう」「デザインが古いからだろう」という社内の見立ては、どれももっともらしく聞こえます。けれども、実際にどんな言葉で人が来ているのか、あるいは来ていないのかを見てからでないと、直す場所を間違えてしまいます。
材料を突き合わせて分かったのは、原因がページの見た目ではなく言葉にあったことでした。工事名、工事の中身の書き方、実績の並べ方。この三つが、それぞれ別の形で、探している人とのあいだにずれを生んでいたのです。
発注書類どおりの工事名で、検索する言葉とずれていた実績ページ
実績ページに並んでいた工事名は、発注機関の書類に書かれたものをそのまま写していました。たとえば、次のような名前です。
- 市道〇〇線道路改良工事(その2)
- 〇〇川護岸整備工事
- 〇〇小学校屋外環境整備工事
役所の中では、この名前で通じます。どの路線の、何期目の工事かが一目で分かるからです。けれども、民間の人がこの言葉で検索することはまずありません。Search Console を見ると、実績ページが表示されていたのは、会社名で検索されたときと、工事名の一部を打ち込まれたときがほとんどでした。後者はおそらく、入札の情報を調べている同業者や関係者でしょう。
一方で、民間の人が施工会社を探すときに使いそうな言葉、たとえば擁壁や舗装、地盤の改良といった工事の種類の名前は、ページの中にほとんど出てきません。「道路改良工事」の中身が、実際には擁壁を築き直して歩道を広げる工事だったとしても、そのことはどこにも書かれていなかったのです。言葉が載っていなければ、検索で見つけてもらう手がかりもありません。
発注者が確かめたい工法・規模・工期が読み取れない書き方
仮に検索で実績ページにたどり着いたとしても、まだ壁があります。民間の発注者が実績ページで確かめたいのは、「自分が頼みたい工事と同じような工事を、この会社はやったことがあるか」です。そのためには、どんな工法で、どのくらいの規模を、どれだけの期間で仕上げたのかが分からなければなりません。
ところが当時の実績ページには、工事名と工期と発注機関しか書かれていませんでした。擁壁の高さも延長も、舗装の面積も、どんな工法を選んだのかも読み取れませんでした。過去の問い合わせの記録を読み返すと、電話で最初に聞かれていたのは、まさにこうした点でした。どのくらいの高さの擁壁まで手がけられるのか、工場を動かしたまま工事を進められるのか、といった質問です。
ページに書いておけば、電話の前に確かめられたはずのことです。言い換えると、書かれていないせいで、確かめる手間を嫌った人がそのまま別の会社を探しに行っていたのかもしれません。問い合わせの記録は、届いた相談の裏にある、届かなかった相談の多さも物語っていました。
どこで何を手がけた会社なのかが地域の人に伝わらない並べ方
実績の並べ方にも、ずれがありました。実績ページは年度順に並んでいて、新しい年度が上に来ます。発注機関にとっては、直近にどれだけの工事を受けたかが分かるので便利な並べ方です。
ところが地域の人にとっては、年度はあまり意味を持ちません。気になるのは「自分の町で、どんな工事をしてきた会社なのか」です。この建設会社は、市内のあちこちで道路や水路の工事を長年手がけてきました。地元の人なら、毎日通る道の工事をした会社かもしれません。けれども、実績が年度順に並んでいるだけでは、その土地とのつながりが見えてきません。
営業担当者からも、似た話が出てきました。地元の事業者に会社名を伝えても、すぐには思い出してもらえないことがあるそうです。その人が毎日使っている橋の補修をしたのがこの会社だと話すと、ようやく分かってもらえるのだとか。地域の中での実績が、そのまま地域の人への名刺になっていなかったのです。
発注者と地域の人が建設会社を調べるときの言葉の洗い出し
原因が言葉にあると分かったので、次は「では、どんな言葉で書けばよいのか」を決める段階です。WEB担当者は、いきなりページを書き換えるのではなく、先に相手が使う言葉を集めることから始めました。書き換えてから検索語とのずれに気づくと、また全部を直すことになるからです。
進める前に決めたことが一つあります。民間の発注者と地域の人を、同じ相手として扱わないことです。どちらも民間ではありますが、探している理由が違います。民間の発注者は、頼む工事がすでに決まっていて、それができる会社を探しています。地域の人は、近くの工事が気になって調べる場合もあれば、ちょっとした工事を頼める地元の会社を探す場合もあります。理由が違えば、検索に使う言葉も違ってくるはずです。
言葉を集める材料にしたのは、次の四つです。
- Search Console に出ている検索語
- 過去の問い合わせの文面
- 営業担当者と現場の担当者への聞き取り
- 検索窓に言葉を入れたときに出てくる候補
集めてみると、二つの相手の言葉はやはりはっきり分かれていました。
検索窓に出る候補を一つずつ手で拾っていると、「擁壁」「舗装」のような工事の種類の語に、どんな地域名や条件の語が続くのかを見落としがちです。サジェストキーワード取得ツールの「軸キーワード+複合」モードなら、軸にした工事の種類の語に続く複合語をまとめて取り出せます。工事の種類ごとに取り出し、地域名が続く語と、稼働中・夜間のような条件が続く語を分けて眺めると、民間の発注者の言葉と地域の人の言葉を仕分ける下地ができます。
民間の発注者や設計事務所が施工会社を探すときの言葉
民間の発注者の言葉には、共通する形がありました。工事の種類と地域の名前の組み合わせです。「〇〇市 擁壁工事」「駐車場 舗装 業者 〇〇市」「工場 地盤改良」。頼みたいことがはっきりしているので、言葉も具体的になります。
工法の名前で調べる人もいます。過去の問い合わせの中には、設計事務所からのものが混じっていました。設計事務所は、図面を引く段階で、その工法を扱った経験のある施工会社を探すことがあります。営業担当者によると、設計事務所は施工実績の写真と規模を手がかりに、施主へ施工会社を紹介することもあるそうです。設計事務所にとって、実績ページは施主への説明の材料にもなるわけです。
もう一つ見えてきたのは、条件を言い添える言葉です。「稼働中」「夜間」「狭い敷地」「短工期」。工場を止めずに工事したい、店舗の営業時間外に終わらせたい、といった事情は、民間の工事ならではのものです。公共工事でも、交通を止めずに夜間に進める工事や、限られた期間で仕上げる工事は経験していました。言葉の上では別の世界に見えても、手がけてきたことは重なっていたのです。
地域の住民や事業者が近くの工事や施工会社を調べるときの言葉
地域の人の言葉は、また違う顔をしていました。まず多かったのは、目の前の工事について調べる言葉です。「〇〇町 工事 何」「〇〇川 工事 いつまで」「〇〇通り 通行止め」。工事現場の前を通った人が、何の工事なのか、いつ終わるのかを知りたくて検索します。
この人たちは、工事を頼みたいわけではありません。それでも、ここで会社の名前と仕事ぶりを知ってもらえれば、後で何かを頼むときに思い出してもらえるかもしれません。WEB担当者は、こうした検索も入口の一つとして扱うことにしました。
もう一つは、地元の会社に小さな工事を頼みたい人の言葉です。「駐車場 舗装 地元」「側溝 修理 〇〇市」「外構 工事 近く」。自宅や事業所の周りの工事を、近くの会社に頼みたいという気持ちが言葉に出ています。地域の事業者の場合は、店舗の駐車場や倉庫の周りの舗装、敷地の排水の改善といった相談が考えられます。どちらにも共通していたのは、工事の種類よりも先に、場所の言葉が来ることでした。民間の発注者が「工事の種類+地域」で探すのとは、言葉の重心が逆になっています。この違いが、次の章で実績ページの入口を二通りに分ける理由になりました。
発注者と地域の人が調べる言葉に合わせた実績ページの整え方
集めた言葉をもとに、いよいよ実績ページを整えていきます。WEB担当者がここで決めていたのは、発注機関に向けた情報を消さないことでした。これまでの実績ページは、発注機関や元請けの会社が信用を確かめる場所でもあります。民間向けに書き換えた結果、そちらで困る人が出ては元も子もありません。
そこで、工事名の書き方、実績ごとに載せる項目、ページのたどり方、公開してよい範囲の確認という順で進めました。工事名を先にしたのは、検索結果に表示されるのも、一覧で目に入るのも、まず工事名だからです。項目と入口はその次。公開範囲の確認は最後に書いていますが、実際には、書き換えたページを公開する前に必ず通す関門として、全部の作業と並行して進めています。
全体を通して分かったのは、書き足す情報の多くが、すでに社内のどこかにあったことです。工事の書類、現場の写真、担当者の記憶。新しく調べる必要があったのは、ほんの一部でした。
場所・工種・目的を言い添えた工事名
工事名の直し方は、発注書類の名前を消すのではなく、その前に分かりやすい名前を置くというものです。たとえば「市道〇〇線道路改良工事(その2)」なら、ページの見出しを「〇〇市〇〇町の通学路で、擁壁を築き直して歩道を広げた道路工事」とし、正式な工事名はその下に添えます。
言い添える要素は、場所と工事の種類と目的の三つにそろえ、それぞれ次のように書いています。
| 言い添える要素 | 書き方 | 主に届く相手 |
|---|---|---|
| 場所 | 市の名前に加えて、町名や通りの名前まで | 地域の住民や事業者 |
| 工事の種類 | 擁壁・舗装・護岸・側溝など、検索で使われる名前 | 民間の発注者や設計事務所 |
| 目的 | 通学路の安全のため、大雨のときの浸水を減らすため、といった一言 | 見出しを読んで会社を比べる人 |
目的を添えたのには、もう一つ理由がありました。工事の種類と場所だけでは、どの会社のページも似た見出しになってしまいます。何のための工事だったのかを書くと、その会社がどんな仕事を大事にしてきたのかが、見出しの段階で伝わるようになりました。
工法・規模・工期・担当範囲をそろえた実績の項目
次に、一つひとつの実績に載せる項目を決めました。次の四つを、全部の実績で同じ順番にそろえます。
- 工法
擁壁ならどんな構造で築いたのか、舗装なら何を使ったのか - 規模
擁壁の高さと延長、舗装の面積といった、工事の大きさが分かる数字 - 工期
着工から完成までの期間と、夜間や交通規制の中で進めたといった条件 - 担当範囲
元請けとして全体を受けたのか一部なのか、設計から関わったのか施工だけなのか
工期に条件まで書くのは、民間の発注者が気にしていた「稼働中でもできるか」に答える材料になるからです。担当範囲は、意外と見落とされがちな項目でした。ここが曖昧だと、読む人は会社の力量を測りにくくなります。項目がそろうと、実績どうしを見比べられるようにもなりました。読む人が自分の工事に近いものを選んで読める状態、それを目指したわけです。
地域別・工種別に実績ページをたどれる入口
工事名と項目を整えたら、今度は実績へのたどり方です。年度順の一覧は残したまま、市町村ごとの一覧と、工事の種類ごとの一覧を新しく作りました。
市町村ごとの一覧は、地域の人のための入口です。「〇〇町での工事」のページを開くと、その町で手がけた工事が並びます。毎日通る道や、子どもが通う学校の工事がそこにあれば、会社の名前と仕事ぶりが一気に身近になります。工事の種類ごとの一覧は、民間の発注者や設計事務所のための入口です。擁壁の実績だけ、舗装の実績だけを見比べられるようにしました。

一覧のページにも、短い説明文を付けています。その地域でどんな工事を多く手がけてきたのか、その工事の種類で何を得意としているのか。一覧が単なる見出しの並びにならないようにするためです。そして各実績のページからは、同じ地域の別の実績、同じ種類の別の実績へと移れるようにしました。一つのページを読んだ人が、次のページへ自然に進めるようにするためです。
公共工事の実績を載せる前に発注機関へ確かめた公開の範囲
ここまで書き換えを進める一方で、WEB担当者がずっと気にかけていたことがあります。公共工事の中身を、どこまでホームページで公開してよいのかです。工事名や場所は、すでに発注機関が公表している情報かもしれません。けれども、現場の写真や細かな規模、工夫した点まで載せるとなると、話は別です。
そこで、契約の書類に公表についての定めがないかを確かめたうえで、発注機関の担当課に、実績として載せたい内容を見せて問い合わせました。多くは問題ないという返事でしたが、施設の種類によっては、構造が分かる写真は控えてほしいと言われたものもありました。また、写真に写り込んだ人の顔や車のナンバー、近くの住宅は、発注機関に言われる前に社内で隠すことにしています。
手間はかかります。それでも、この確認を先に済ませておいたことで、後から「あの写真は困る」と言われて慌てて消すことはありませんでした。発注機関との信頼は、この会社にとって何より大事な財産です。民間からの相談を増やすために、その信頼を損ねては意味がありません。
実績ページの更新を社内で続けるための体制
実績ページを一度整えても、そこで止まってしまえば、数年後にはまた古い工事ばかりが並ぶページに戻ります。WEB担当者が書き換えと同じくらい時間をかけたのは、新しい工事が終わるたびに実績が自然に増えていく流れを、社内に作ることでした。
ここで先に決めたのは、WEB担当者がひとりで抱え込まないことです。工事の中身をいちばんよく知っているのは現場の担当者で、WEB担当者は現場に毎回出られるわけではありません。かといって、忙しい現場の担当者に文章を書いてもらうのは無理があります。どこまでを現場に頼み、どこからをWEB担当者が引き取るのか。その線引きから考えました。
順番としては、まず現場から情報を受け取る流れを作り、次に公開前の確認と更新の時期を決めています。情報が集まらなければ、確認の仕組みを作っても回る中身がないからです。やってみて分かったのは、現場の負担を減らすほど、かえって情報が集まりやすくなることでした。
現場の担当者から工事の情報を集める流れ
現場の担当者に頼んだのは、工事が終わったときに、決まった項目を埋めた一枚の記録を出してもらうことだけです。項目は、実績ページに載せる工法・規模・工期・担当範囲に合わせてあります。そこに、工事の目的と、現場で苦労したことや工夫したことを一言ずつ書き添えてもらいます。文章でなくてもかまわない、箇条でも走り書きでもよい、と伝えました。
写真も同じ考え方です。完成写真だけでなく、工事の途中の写真があると、読む人に工法が伝わりやすくなります。そこで、もともと工事の記録として撮っている写真の中から、使えそうなものを数枚選んでもらうようにしました。新しく撮り直す手間はかけません。
この記録をもとに、WEB担当者が実績ページの文章に起こします。分からないところは、現場の担当者に電話で数分だけ聞くようにしました。これなら、現場の担当者は工事の完了の書類を作るついでに記録を出せます。とはいえ、最初のうちは記録が遅れがちでした。工事の完了前後は書類が多く、どうしても後回しになるからです。WEB担当者は、記録の項目を工事の完了の書類と同じ並びに直し、書類から写すだけで半分は埋まるようにしました。もう一つ効いたのは、完成した実績ページを現場の担当者に見せたことです。自分の仕事がこう紹介されるのか、と分かると、次の記録には細かな工夫まで書いてくれるようになったのです。
公開前の確認と更新の時期を決めた役割分担
情報が集まるようになったら、次は公開までの確認です。この建設会社では、一件の実績を次の順で公開まで運んでいます。
- STEP 01
記録の提出
工事が終わったら、現場の担当者が決まった項目を埋めた記録と写真を出す
- STEP 02
書き起こし
WEB担当者が記録をもとに実績ページの文章を書く
- STEP 03
現場の確認
現場の担当者が読み、工法や規模に間違いがないかを見る
- STEP 04
発注機関への確認
公共工事の実績は、前の章で触れた公開の範囲の確認を済ませる
- STEP 05
月に一度の公開
決めた公開日に、確認が済んだものをまとめて公開する
現場と発注機関の二段の確認は、どの実績でも同じように通すことにしました。
更新の時期も決めています。工事が終わるたびに一件ずつ載せるのが理想ですが、工事の完了が重なる時期には手が回りません。そこで、公開日を月に一度にまとめています。決まった日があると、現場の担当者も「次の公開日までに記録を出そう」と動きやすくなりました。
役割を分けたことで、WEB担当者が休んだり異動したりしても、流れが止まりにくくなっています。記録の書式と確認の順番が決まっていれば、別の人が引き継いでも同じように回せるからです。続けるための体制は、特別な仕組みではなく、誰がいつ何をするかを決めておくことでした。
実績ページを整えたあと民間から相談が入るまでの変化
実績ページを整えてから、何が変わったのか。ここでは、検索から来る人の言葉と、届いた相談の中身という二つの面から見ていきます。最初に断っておくと、変化はすぐには出ませんでした。書き換えた直後の数か月は、目に見える違いはほとんどありません。本当にこれでよかったのかと、迷いが出やすい時期です。
変化を見るときに決めていたのは、問い合わせの件数だけで判断しないことでした。件数は、季節や景気の影響も受けます。それよりも先に、検索語が変わっているか、つまり探している人に見つけてもらえるようになったかを確かめます。相談の件数は、その後からついてくるはずだと考えていました。
なお、この先に出てくる数値は、モデルケースとしての一例です。会社の規模や地域、もともとの実績の数によって、変化の大きさや時期は変わります。自社の数値と比べるときは、増え方の向きと順番を参考にしてください。
検索から実績ページに来る人が使う言葉の変化
まず変わったのは、Search Console に表示される検索語でした。以前は会社名と工事名の一部がほとんどだったのが、「〇〇市 擁壁」「〇〇町 舗装 工事」のような、工事の種類と地域の名前を組み合わせた検索語が少しずつ増えていきました。
中でも目立ったのは、町名や通りの名前を含む検索語です。工事名に場所を言い添えたことが、そのまま効いた形でした。地域別の一覧のページが、町名で検索した人の入口になっている様子も見えてきました。
工法の名前や、条件を表す言葉で来る人も現れています。「稼働中 工事」「夜間 舗装」といった言葉で、公共工事の実績ページに人が来るようになりました。交通を止めずに夜間に進めた道路工事の実績が、営業時間外に駐車場を直したい民間の事業者の目に留まったのです。言葉を言い添えたことで、公共工事の経験が民間の悩みにつながり始めた、と感じられる変化でした。
「〇〇市 擁壁」のように地域名を含む検索語は、どこから調べるかによって検索結果が変わることがあります。SEO検索順位チェックツールは、市区町村の単位まで地域を指定して順位を調べられるので、会社の所在地からではなく、相談を受けたい町から見た順位を確かめられます。前回の順位と取得日も並べて表示されるため、実績ページを書き換える前と後で順位が動いたかを、同じ条件のまま追いかけられます。
民間の発注者や地域の事業者から届いた相談の中身
相談の件数は、検索語の変化から少し遅れて増えていきました。一例として、整える前と後を比べると次のようになります。
| 項目(一例) | 整える前 | 整えた後 |
|---|---|---|
| 実績ページが表示される検索語 | 会社名と工事名の一部がほとんど | 整えてから半年ほどで、種類が整える前の数倍に |
| 民間からの問い合わせ | 年に数件 | 整えてから一年ほどで、月に数件 |
数よりも大きかったのは、相談の中身の変化です。以前の問い合わせは、そもそもこの種類の工事ができるのかという、会社の力量を確かめるところから始まるものがほとんどでした。整えた後は、〇〇町の擁壁の実績を見たうえで、自分の敷地でも同じような工事ができないかを尋ねるといったように、特定の実績を挙げて相談してくる人が増えています。実績ページで確かめたうえで連絡してくるので、話が早く進みます。
設計事務所からの相談も届くようになりました。工事の種類ごとの一覧で実績を見比べ、規模と工法が近い工事を手がけた会社として声をかけてきたものです。地域の事業者からは、店舗の駐車場の舗装や、敷地の水はけの改善といった相談が入りました。どれも、それまでは人づての紹介でしか受けていなかった種類の仕事です。もっとも、相談がすべて受注につながったわけではありません。それでも、民間からの相談の入口が人の縁だけではなくなったことは、この会社にとって大きな一歩でした。
社内の受け止め方にも変化がありました。民間の相談が実績ページから届くようになると、営業担当者が商談の場で実績ページを見せながら話すようになったのです。相談のきっかけになった実績ページを見せれば、どんな工事をどんな条件で進めたのかを、説明し直さずに済みます。ページを整えたことが、社内で実績を語る共通の言葉にもなっていったわけです。
公共事業を手がける建設会社のSEOで要になった実績ページの言葉選び
ここからは、私の立場からこのモデルケースを振り返ります。何が効いたのかをひと言でまとめるなら、工事名を「誰のための、何の工事か」という言葉に言い換えたことでした。
公共事業に関わる建設会社の実績ページは、どうしても発注機関の言葉で書かれます。それは自然なことです。入札の書類も、工事の記録も、発注機関の言葉で作られているからです。けれども、その言葉は役所の中で工事を区別するためのもので、民間の人が工事を探すための言葉ではありません。同じ工事でも、呼び方が変われば、見つけてくれる人が変わります。この事例で起きたのは、その当たり前のことでした。
言葉選びでとくに効いたと感じるのは、発注書類の名前を捨てなかったことです。分かりやすい名前を前に置き、正式な工事名を後ろに残しました。これで、民間の人には伝わりやすく、発注機関や元請けの会社には照らし合わせやすいページになっています。どちらか一方の言葉に寄せていたら、もう一方の読み手を失っていたかもしれません。

一つのページの中でも、読み手ごとに目を留める場所は違います。そう考えると、言葉を入れ替えるのではなく重ねて置くという直し方が、自然に選べるようになります。
場所の言葉を細かく書いたことも大きかったと思います。市の名前だけでなく、町名や通りの名前まで書きました。地元の建設会社にとって、地域の中で積み重ねてきた工事は、ほかの会社にはまねできない強みです。それを地域の人が使う言葉で書いたことで、検索の入口になり、会社の名刺にもなりました。
もう一つ挙げるなら、目的を書いたことです。通学路の安全のため、浸水を減らすため。目的の言葉は、検索語にはあまり出てきません。それでも、実績ページを読んだ人が「この会社に頼みたい」と思う理由になっていたように見えます。相談の中に、工事の目的に触れたものがいくつもあったからです。
逆に、言葉を足しすぎないことにも気を配りました。検索語を意識するあまり、同じ地域名や工事の種類を何度も繰り返すと、読みにくいページになります。言い添えるのは見出しと項目に一度ずつにとどめ、あとは工事の中身を、現場の担当者の記録に沿って素直に書いています。この加減が、読みやすさと見つけてもらいやすさの両方を保つ鍵だったと考えています。
専門用語の扱いにも、迷う場面がありました。現場では「法面」「土留め」と呼ぶものを、地域の人は「斜面」「崖の補強」と言います。どちらで書くべきか。この会社では、見出しには地域の人の言葉を使い、本文の項目には現場の言葉も並べて書くことにしました。地域の人には見出しで伝わり、設計事務所や民間の発注者には本文の専門用語で力量が伝わります。一つの言葉に決めきれないときは、読み手ごとに置く場所を分ければよい、というのがこの事例から得た手応えです。
まとめ
公共事業を中心に請け負ってきた建設会社が、民間からの相談を増やすために手を入れたのは、すでにあった実績ページの言葉でした。発注書類どおりの工事名、工法や規模が読み取れない書き方、年度順だけの並べ方。この三つが、民間の発注者や地域の人とのあいだにずれを生んでいました。
直し方の流れを振り返ると、次のとおりです。
- 民間の発注者と地域の人が使う言葉を先に集める
- 工事名に場所・工事の種類・目的を言い添え、工法・規模・工期・担当範囲の項目をそろえる
- 地域別と工種別の入口を作る
- 公共工事の実績は、公開の範囲を発注機関に確かめてから載せる
- 現場の記録をもとに月に一度公開し、更新を止めない
特別なツールや大きな予算を使ったわけではありません。社内にすでにあった工事の記録を、探している人の言葉で書き直しただけです。
あなたの会社の実績ページは、誰の言葉で書かれているでしょうか。まずは一件、工事名の前に「どこで、何のための、何の工事か」を書き添えるところから試してみてください。










