店名で検索してくれる人がいるのに、予約はなぜかポータルサイトから入ってきます。美容室の運営に関わっていると、そんな状況に首をかしげたことがあるかもしれません。店の名前を知って探してくれた人は、本来いちばん自社で迎えたいお客さまです。その人たちが、掲載料や手数料のかかる入口を通って予約しているとしたら、もったいない話でしょう。
美容業界のSEOに取り組む前、美容サロンが抱えていた予約の課題
この記事でいう美容サロンは、カットやカラー、パーマを行う美容室、いわゆるヘアサロンのことです。エステやネイルの店は含めていません。また、指名検索という言葉は、店名やスタイリストの名前のように、特定の店や人を名指しして探す検索を指して使います。美容室で「指名」というとスタイリストを選ぶことを思い浮かべるかもしれませんが、ここでは店名での検索も含めた広い意味です。
この美容室は、地方都市の駅前で営業している、スタイリスト六名ほどの店です。開業から十年を超え、常連のお客さまも多く、地域では名前の知られた店でした。予約の受け方は、電話と、美容室を探す人向けの予約ポータルサイト、それに自社サイトの予約フォームの三つです。
この節では、取り組む前の予約の姿を、どこから予約が入っていたのかと、それが経営にどう響いていたのかの二つから整理します。先に予約の入り方を見たのは、店の担当者自身が「店名で探してくれる人が多い」ことに気づいていながら、その人たちがどこで予約を終えているのかを確かめていなかったからでした。確かめてみると、知名度の高さが、そのままポータルサイトの利益になっていたのです。
店名で検索した人の多くがポータルサイト経由で予約していた状況
予約の記録を入口ごとに分けてみると、新しいお客さまの予約は、ほとんどがポータルサイトからでした。それ自体は、ポータルサイトの役割を考えれば不思議ではありません。店を知らない人が、エリアや料金で店を探す入口として、ポータルサイトはよくできています。
店を選ぶ側から見れば、美容室の数そのものも多く、しかも増え続けています。厚生労働省の衛生行政報告例では、令和6年度末の美容所は277,752施設で、令和2年度末の257,890施設から約2万施設増えました。これだけ店があれば、比べやすいポータルサイトに頼りたくなる場面も増えるでしょう。
気になったのは、ポータルサイトから予約した人のうち、来店時のカウンセリングシートで「店名を検索して知った」「知人に店名を聞いた」と答える人が少なくなかったことです。つまり、はじめから店を名指しで探していた人が、途中でポータルサイトの店舗ページにたどり着き、そこで予約を済ませていました。
担当者はこの結果を見て、少し考え込んだといいます。店名で探してくれた人なら、自社サイトで予約を受けられたはずです。それなのに、わざわざ手数料のかかる入口を通してしまっているのです。どこでその人たちの道筋が分かれているのかを知りたい、というのが、取り組みの出発点になりました。
掲載料と手数料が利益を圧迫する厳しい経営事情
ポータルサイトへの掲載には、毎月の掲載料がかかります。そのうえで、予約や来店に応じた手数料がかかる仕組みの場合、予約が増えるほど支払いも増えていきます。新しいお客さまを連れてきてくれる入口としては、それだけの価値があります。担当者も、そこは認めていました。
ただ、店名で探してくれた人の予約にまで同じ費用がかかっているとなると、話は変わります。その人たちはポータルサイトがなくても店にたどり着けたかもしれないのに、費用だけが積み上がっていきます。材料費や人件費が上がる中で、この負担は小さくありませんでした。
もう一つ気がかりだったのが、お客さまとの関係です。ポータルサイト経由の予約では、次の予約も同じ入口から入ることが多く、店から直接お知らせを届ける機会が限られます。常連になってもらうほど、店とお客さまの間にポータルサイトが挟まり続ける形です。ここで、「自社サイトで予約を受ける力を取り戻したい」という目標がはっきりしました。
指名検索が直接予約につながらなかった理由
担当者は次に、店名やスタイリストの名前で探した人が、どこで自社サイトから離れているのかを確かめました。見た順に並べると、次の四つです。
- STEP 01
店名での検索結果の並び
店名で検索したとき、どんなサイトがどの順で並ぶか
- STEP 02
スタイリスト名での検索結果
スタイリストの名前で検索したとき、何が表示されるか
- STEP 03
予約ボタンの行き先
Googleビジネスプロフィールの、地図の情報に出る予約ボタンが、どこにつながっているか
- STEP 04
自社サイトの中身
予約の前に確かめたいことが載っているか
この順で見たのは、利用者が実際にたどる道筋と同じだからです。店名で検索し、表示された結果の中から一つを選び、地図の情報や予約ボタンを見て、最後に予約先のページで中身を確かめる、という流れです。どの段階で自社サイトが選ばれなくなっているのかを、手前から順に確かめていきました。
四つを並べてみると、道筋の分かれ目は一か所ではありませんでした。検索結果でも、地図の情報でも、自社サイトの中でも、少しずつポータルサイトのほうへ流れる理由がありました。どれか一つを直せば済む話ではない、と分かったことが、この後の取り組みの組み立てを決めました。
店名の検索結果の上位を占めるポータルサイト
店名で検索すると、自社サイトは上のほうに表示されていました。ところが、そのすぐ下に、ポータルサイトの店舗ページが並びます。さらに口コミをまとめたサイトや、地域の店を紹介するサイトも続き、検索結果の多くが店以外のサイトで占められていました。
利用者から見ると、どれも同じ店の情報です。そのうえで、どれを選ぶかは見出しと説明の文で決まります。ポータルサイトの店舗ページは「空席あり」「ネット予約可」のように、すぐ予約できることが見出しから分かる作りでした。一方、自社サイトの見出しは店名だけで、説明の文も店のあいさつから始まっていました。
店名で探した人の目的は、多くの場合、その店に予約することです。予約できることがはっきり書かれた結果と、店名しか書かれていない結果が並べば、前者を選ぶ人が多くなっても不思議ではありません。自社サイトが一番上にあっても、選ばれる理由を見せられていなかったのです。
スタイリスト名で検索しても見つからない自社サイトの紹介ページ
スタイリストの名前で検索したときは、状況がもっとはっきりしていました。自社サイトのスタッフ紹介は一枚のページに全員が並ぶ作りで、名前と写真、ひと言のコメントがあるだけです。スタイリストの名前で検索しても、このページはほとんど表示されませんでした。
代わりに表示されていたのは、ポータルサイトのスタイリスト紹介のページと、スタイリスト本人のSNSのアカウントです。ポータルサイトのページには、得意なスタイルや施術の写真、そのスタイリストを指名して予約できるボタンがそろっていました。
以前担当してもらったスタイリストに、もう一度お願いしたい。そう考えて名前で探した人にとって、指名して予約できるページはまさに求めていたものです。自社サイトには、その受け皿がありませんでした。スタッフ紹介のページでは、スタイリストの名前が名字だけで書かれていて、ポータルサイトやSNSで使っている呼び名とも違っていました。名前で探す人が打ち込む言葉と、自社サイトの表記がそろっていなかったことも、見つけてもらえない理由の一つです。
ポータルサイトにつながっていたGoogleビジネスプロフィールの予約ボタン
店名で検索すると、検索結果の右側やスマートフォンの画面の上のほうに、店の地図と情報をまとめた枠が表示されることがあります。この情報を管理するのがGoogleビジネスプロフィールで、店の営業時間や写真、口コミと並んで予約ボタンも表示されます。
担当者が確かめてみると、その予約ボタンの行き先は、ポータルサイトの店舗ページでした。Googleは特定の予約サービスの事業者と連携していて、そうしたサービスへのリンクが、店が設定しなくても自動で表示されることがあります。
店名で探し、地図の情報を見て、そのまま予約ボタンを押した人は、気づかないうちにポータルサイトで予約していたわけです。

これは担当者にとって意外な発見でした。自社サイトを見てもらう前の段階で、いちばん予約に近いボタンがポータルサイトにつながっていたからです。検索結果の並び以上に、ここが大きな分かれ目になっていた可能性があります。
予約前の確認に足りない自社サイトのメニューと料金
自社サイトまで来てくれた人も、そこで予約を終えずにポータルサイトへ移っていることがありました。理由を探ると、メニューと料金の載せ方にありました。
自社サイトのメニューは、カット、カラー、パーマといった大きな分類と、基本の料金が並ぶだけでした。髪の長さによる料金の違いや、トリートメントを足した場合の料金、所要時間は書かれていません。ポータルサイトのほうは、メニューごとに料金と所要時間が細かく載っていて、クーポンも選べます。
予約の前に、いくらかかって何時間かかるのかを確かめたい。その当たり前の確認が、自社サイトではできなかったのです。結果として、中身を確かめるためにポータルサイトを開き、そのままそこで予約する、という流れができていました。自社サイトの情報の薄さが、自分から予約をポータルサイトへ送り出していたことになります。
美容サロンが店名の検索結果を自社サイトで受け止めるために進めたこと
分かれ目が見えたところで、担当者は自社サイトの中身から手を付けました。検索結果の見出しや予約ボタンの行き先を先に変えても、たどり着いた自社サイトに予約の前に確かめたいことが載っていなければ、結局ポータルサイトへ戻られてしまうからです。
進める前に決めたのは、「ポータルサイトより詳しく」を目指さないことでした。料金の細かさやクーポンの数でポータルサイトと張り合っても、勝ち目は薄いでしょう。それより、店名で探してくれた人が知りたいことに、店の言葉で答えることを優先しました。そこで最初に、その人たちが予約の前に何を確かめたいのかを洗い出しています。
洗い出しを終えてみると、確かめたいことの多くはスタイリストに関わることでした。誰に担当してもらえるのか、その人は何が得意なのか、いつなら空いているのか。店名で探す人は、店を選んだあとで「誰に頼むか」を決めようとしていたのです。この気づきが、スタイリストごとのページを作る判断につながりました。
店名で検索する人が予約前に確かめたいことの洗い出し
担当者は、受付に届く電話の質問と、来店時のカウンセリングで聞かれたことを、ひと月ほど書き留めました。そこに、ポータルサイト経由で予約した人が予約時に書き込んだ要望も加えています。
並べてみると、質問はいくつかの種類にまとまりました。
- 担当してほしいスタイリストの空き状況
- そのスタイリストの得意なスタイル
- 髪の長さや量で料金が変わるのか
- カラーとトリートメントを一緒に頼むと何時間かかるのか
- 駐車場はあるのか
どれも、予約ボタンを押す直前に確かめたくなることです。
一方で、店の雰囲気やこだわりについての質問は、ほとんどありませんでした。店名で探す人は、すでに店のことをある程度知っています。求めているのは店の紹介ではなく、予約を決めるための具体的な情報でした。自社サイトのトップページが店のあいさつから始まっていたのは、この人たちの知りたいことと、ちょうど逆の順番だったわけです。
得意な施術と予約枠をつないだスタイリストごとのページ
洗い出しの結果を受けて、スタッフ紹介を一人ひとりのページに分けました。各ページには、スタイリストの名前、得意な施術、担当したスタイルの写真、経歴を載せ、そのスタイリストを指名して予約できるボタンを置いています。
工夫したのは、得意な施術と予約の枠をつないだことです。たとえばショートカットを得意とするスタイリストのページでは、ショートカットのスタイル写真の下に、そのスタイリストのカットの予約へ進むボタンを置きました。写真を見て「この人にお願いしたい」と思った人が、そのまま予約へ進める形です。

スタイル写真は、お客さまに掲載の同意をいただいたものだけを使っています。写真を載せることには、利用者にスタイリストの腕前を伝える役目があります。そのぶん、写真の扱いには店として責任を持つ必要がありました。
ページの見出しには、スタイリストの名前と店名を並べて書きました。名前で検索した人に、「この店のこの人のページだ」とすぐに分かってもらうためです。結果として、スタイリスト名での検索でも、自社サイトの個人のページが表示されるようになっていきました。
店名の検索結果で自社サイトを選んでもらうためのタイトルと説明文
次に手を入れたのが、検索結果に表示される見出しと説明の文です。検索結果の見出しには多くの場合ページのタイトルが、説明の文にはメタディスクリプションや本文の一部が使われます。メタディスクリプションとは、ページの内容を短くまとめた説明の文で、検索結果に表示されることを見込んで書くものです。
トップページのタイトルと説明の文は、次のように変えています。
| 項目 | 以前 | 見直し後 |
|---|---|---|
| タイトル | 店名だけ | 店名に続けて駅名と「ネット予約」 |
| 説明の文 | 店のあいさつから始まる文 | スタイリストを指名して予約できること、メニューと料金、所要時間を確かめられること |
こう変えたのは、店名で探した人が、この結果を選べば予約まで進めると分かるようにするためです。
ただ、検索結果の見出しや説明は、書いたとおりに表示されるとは限りません。Googleがページの内容から別の文を選んで表示することもあります。だからこそ、タイトルや説明の文だけを整えるのではなく、ページの中身そのものを予約に必要な情報でそろえておくことが大事でした。見出しに書いた約束を、ページの中身で守ること。この順番を崩さないように進めています。
自社サイトで予約を終えてもらうための導線の見直し
中身がそろったところで、担当者は自社サイトの中で予約を終えてもらうための道筋を見直しました。店名で探してくれた人が自社サイトに来ても、予約のボタンが見つけにくかったり、料金の見方が分かりにくかったりすれば、ポータルサイトへ戻ってしまうからです。
見直す前に、ポータルサイトとの関係をどうするかを決めました。ポータルサイトの掲載はやめません。店を知らない人が新しく出会う入口として、これからも役に立つからです。そのうえで、店名で探してくれた人だけは自社サイトで迎える、という線を引きました。
手を入れたのは、予約ボタンの置き方、メニュー名と料金の表記、Googleビジネスプロフィールの予約先の三つです。どれも、利用者が予約の直前に迷いやすい場所でした。三つを直してみると、利用者の迷いを減らすことと、ポータルサイトとの役割を分けることは、同じ一つの作業だと分かりました。
どのページからも迷わない予約ボタンの配置
以前の自社サイトでは、予約フォームへのリンクがトップページの下のほうに一つあるだけでした。スタイリストのページやメニューのページを見ている人は、予約するためにいったんトップページへ戻らなければなりません。
新しい作りでは、どのページにも予約ボタンを置きました。スマートフォンでは画面の下に固定して、どこまで読み進めても押せるようにしています。スタイリストのページのボタンからは、そのスタイリストがすでに選ばれた状態の予約画面が開き、メニューのページのボタンからは、そのメニューが選ばれた状態の予約画面が開きます。
ボタンの文言も見直しました。以前は「お問い合わせ」とだけ書かれていたボタンを、「空き状況を見て予約する」に変えています。押すと何ができるのかが分かる言葉にしたことで、予約の前に電話で空き状況を問い合わせる人も少しずつ減っていきました。
ポータルサイトとそろえたメニュー名と料金の表記
メニュー名と料金は、ポータルサイトに載せている内容とそろえました。自社サイトとポータルサイトで同じメニューの名前や料金が違うと、利用者は「どちらが正しいのか」と迷い、結局ポータルサイトで確かめ直してしまうからです。
そのうえで、自社サイトには、ポータルサイトの一覧では伝えきれない情報を足しました。予約の前に確かめたいことを、自社サイトの一か所で確かめられるようにするためです。
- 髪の長さによる料金の違い
ショートとロングで料金が変わるメニューは、その違いを料金のすぐ横に書く - 組み合わせたときの合計
カラーにトリートメントを足した場合などの合計の料金を示す - 所要時間の目安
メニューごと、組み合わせごとの目安の時間を書く - 施術の流れとカウンセリングの時間
はじめての人が当日の様子を想像できるように、流れを短く説明する
料金の表記では、税込みの総額を先に書くことにしました。追加の料金がかかる条件も、料金のすぐそばに書いています。来店してから「思っていた金額と違う」と感じさせないためです。この表記の決め方は、次の節で触れる広告の決まりとも深く関わってきます。
Googleビジネスプロフィールの予約先の切り替え
最後に手を入れたのが、Googleビジネスプロフィールの予約ボタンの行き先です。Googleのヘルプによると、ビジネスプロフィールには予約などの種類ごとにリンクを追加でき、複数のリンクがある場合は、上部に表示する優先リンクを「ビジネス優先」として設定できます。

担当者は、自社サイトの予約ページのリンクを追加し、それを優先リンクに設定しました。ポータルサイトへのリンクは削除せず、二番目の選択肢として残しています。自動で表示されていた第三者の予約サービスのリンクは、店の側から削除を依頼することもできますが、ポータルサイトを新しいお客さまの入口として残す方針に合わせて、そこまではしませんでした。
店名で検索し、地図の情報から予約ボタンを押した人は、まず自社サイトの予約ページに案内されます。ポータルサイトで予約したい人も、ほかの選択肢からそちらへ進めます。利用者の選ぶ自由を残したまま、いちばん目立つ入口だけを自社サイトに向けた、という形です。
美容業界の広告の決まりの範囲で信頼を伝える自社サイトの書き方
自社サイトで予約を受けるようになると、料金もキャンペーンも施術の説明も、店が自分の責任で書くことになります。ポータルサイトに載せていたときは、掲載の形式がある程度決まっていました。自社サイトでは、どこまで書いてよいのかを店が自分で判断しなければなりません。
担当者がよりどころにしたのは、景品表示法です。景品表示法は、事業者が商品やサービスについて、実際より著しく良いものだと示したり、取引の条件を実際より著しく有利だと誤認させたりする表示のうち、不当に客を引きつけ、消費者が自分で合理的に選ぶことを妨げるおそれのあるものを禁じています。美容室の施術も、この法律でいうサービス、つまり役務にあたります。
進める前に、店の中で決めたことがあります。料金は条件まで含めて書くこと。施術の効果は言い切らないこと。書いた内容は、スタイリストにも読んでもらってから公開すること。どれも、利用者の信頼を損なわないための約束であり、同時に法律の決まりを踏み外さないための約束でした。
景品表示法を踏まえた料金とキャンペーンの表記
景品表示法の第五条第二号は、価格などの取引の条件について、実際のものより著しく有利だと誤認される表示を禁じています。いわゆる有利誤認と呼ばれるものです。美容室の料金表示でいえば、条件付きの割引を、誰でも受けられるかのように見せる書き方がこれにあたるおそれがあります。
この美容室では、キャンペーンを載せるときに、次のことを割引の金額と同じ場所に書くようにしました。
- 対象となる人(はじめての来店の人だけ、など)
- 期間
- 対象のメニュー
たとえば初めての来店の人だけが対象なら、そのことを割引の文字のすぐそばに書きます。小さな注意書きを離れた場所に置くやり方はとりませんでした。
もう一つ気をつけたのが、「通常価格」と割引後の価格を並べる書き方です。消費者庁は、過去の販売価格と比べる二重価格の表示について考え方を示しています。同じサービスについて、最近相当期間にわたって実際に提供していた価格と比べるのであれば、不当表示のおそれはありません。そうとはいえない価格と比べるなら、いつ、どれくらいの期間その価格だったのかを正確に書かない限り、不当表示のおそれがある、という考え方です。この美容室では、実際にその価格で提供していた期間がはっきりしないものは、「通常価格」を並べない形にしました。
効果を言い切らずに伝える施術の説明
景品表示法の第五条第一号は、サービスの内容について、実際のものより著しく優良だと示す表示を禁じています。優良誤認と呼ばれるものです。さらに第七条第二項では、この優良誤認にあたるかを判断するために、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められることがあり、出せなければ優良誤認の表示とみなされると定めています。
施術の説明で言えば、「必ず」「誰でも」「ずっと」のような言い切りは、裏付けを示せるかどうかが問われる書き方です。髪の状態は人によって違い、同じ施術でも仕上がりや持ちは変わります。この美容室では、書き方を次のようにそろえました。
| 書く内容 | 避けた書き方 | 採った書き方 |
|---|---|---|
| 施術の内容 | 効果を約束する言い切り | 施術が何をするものかを書く |
| 向いている人 | 「誰でも」 | どんな髪の悩みの人に向いているかを書く |
| 仕上がりや持ち | 「必ず」「ずっと」 | 「髪の状態によって変わります」と添える |
言い切らないと、説明が弱くなるのではないか。担当者は最初、そう心配していました。けれど、スタイル写真と、その写真の髪がどんな状態から始めたのかを短く添えると、言い切るよりずっと具体的に伝わることが分かりました。利用者が知りたいのは、約束ではなく、自分の髪に置き換えて想像できる材料だったのです。
指名検索からの直接予約の変化
ここからは、取り組みのあとに起きた変化を見ていきます。繰り返しになりますが、この記事はモデルケースで、以下の数値は、同じような取り組みをしたときの動きを示す一例です。
変化を見る指標は、取り組みを始める前に決めておきました。予約全体のうち自社サイトから入った予約が占める割合、店名とスタイリスト名での検索から自社サイトに来た人の数、そして予約の前に電話で問い合わせてくる件数です。予約の件数だけでなく入口の割合を見ることにしたのは、目標がポータルサイトを減らすことではなく、店名で探してくれた人を自社サイトで迎えることだったからです。
変化はすぐには表れませんでした。スタイリストのページが検索結果に出始めるまでにはひと月ほどかかり、その間はポータルサイト経由の予約がこれまでどおり続いています。目に見えて動き出したのは、Googleビジネスプロフィールの予約先を切り替えてからでした。予約の入口の割合がはっきり動いたのは、この切り替えのあとのことです。
自社サイト経由の予約が占める割合の変化
取り組みの前と半年後で、予約の入口は次のように変わりました。
| 指標(一例) | 取り組みの前 | 半年後 |
|---|---|---|
| 予約全体のうち自社サイトから入った予約の割合 | 一割ほど | 四割ほど |
| 予約の前の電話での空き状況の問い合わせ | ― | 目に見えて減った |
予約の件数全体は大きく変わっていないので、ポータルサイトから入っていた予約の一部が、自社サイトへ移ってきたことになります。
移ってきた予約の多くは、以前にも来店したことのある人や、店名で検索した人の予約でした。スタイリストを指名して予約する人も増え、スタイリストのページからの予約が、自社サイト経由の予約の中で大きな割合を占めるようになりました。前回と同じスタイリストを選ぶ予約だけでなく、スタイル写真を見て、はじめてそのスタイリストを指名する予約も入るようになっています。写真と予約のボタンをつないだ工夫が、そのまま予約の中身に表れた形です。
電話での問い合わせが減ったのは、空き状況を見て予約できるボタンと、所要時間まで書いたメニューを見れば、電話で確かめる必要がなくなったからでしょう。施術の手を止めて電話に出る回数が減ったことを、スタイリストたちはいちばん喜んでいました。
新規集客の窓口として残したポータルサイトの役割
ポータルサイトの掲載は、取り組みのあとも続けています。店を知らない人が、エリアや料金、クーポンで店を探すときの入口として、ポータルサイトの役割は変わらないからです。実際、はじめて来店する人の予約は、今もポータルサイトから入るものが多くを占めています。
変わったのは、ポータルサイトに期待する役割の範囲です。以前は、店名で探してくれた人の予約までポータルサイトが受け止めていました。今は、店をまだ知らない人との最初の出会いを任せる場所になっています。一度来店した人には、次の予約を自社サイトから取れることを、会計のときにひと言添えて伝えるようにしました。
新しいお客さまの入口はポータルサイト、二回目からは自社サイト。この役割分担がはっきりしたことで、ポータルサイトに払う費用も、店にとって納得のいく使い道になりました。どちらかをやめるのではなく、それぞれに向いた役目を持たせることが、この美容室にとっての答えだったのです。
指名検索を直接予約につなげるうえで要になったこと
振り返ると、この美容室の変化を生んだのは、新しい集客の仕組みではありませんでした。すでに店名で探してくれていた人を、取りこぼさずに迎えられるようにしたこと。それが、直接の予約を増やした一番の理由です。
私の立場から振り返って、いちばん効いたと感じるのは、利用者がたどる道筋を手前から順に確かめたことです。検索結果の並び、地図の情報の予約ボタン、自社サイトの中身。どこか一か所だけを見ていたら、Googleビジネスプロフィールの予約先のような、思いがけない分かれ目は見つからなかったでしょう。自分で店名を検索し、予約ボタンを押してみること。その手間を惜しまなかったことが、出発点でした。
店名で探す人の知りたいことを、スタイリストを軸に組み立て直したことも大きかったと感じます。店を選んだ人が次に決めたいのは、誰に頼むかです。店の紹介を厚くするより、スタイリスト一人ひとりの得意なことと予約の枠をつないだほうが、ずっと予約に近づきました。
Googleビジネスプロフィールの予約先を切り替えたことが、ほかの取り組みの効き目をまとめて引き出した点も見逃せません。スタイリストのページもメニューの表記も、見てもらえなければ働きません。いちばん予約に近いボタンの行き先を自社サイトに向けたことで、それまでに整えた中身が、ようやく利用者の目に届くようになりました。整える順番としては中身が先、効き目が表れる順番としては入口が先。この二つの順番の違いを知っておくと、取り組みの途中で焦らずに済みます。

料金や施術の説明を、広告の決まりに沿って書いたことは、守りのための作業に見えるかもしれません。けれど、条件まで書いた料金や、言い切らずに具体的な材料を示す説明は、結果として利用者の安心につながりました。ポータルサイトではなく自社サイトで予約してもらうには、その店を信頼してもらうことが欠かせません。決まりを守る書き方が、その信頼を支える土台になっていたのです。
そして、この形は一度作れば終わりではありません。スタイリストが入れ替われば個人のページも入れ替わり、メニューや料金が変われば、自社サイトとポータルサイトの両方をそろえ直す必要があります。店名で検索して予約ボタンを押してみる確認を、月に一度の決まった作業にしておくことをお勧めします。道筋のどこかに、また別の分かれ目ができていないかを確かめるためです。
月に一度の確認では、予約ボタンの行き先と一緒に、店名やスタイリストの名前で自社サイトが何番目に出ているかも記録しておくと、変化に早く気づけます。この順位チェックツールは、自社サイトの URL とキーワードを最大5件まで入れて、Google での順位を調べられます。地域も指定でき、結果には前回の順位と変化、前回の取得日が並ぶので、店名と主なスタイリストの名前をまとめて入れておけば、先月からどう動いたかをその場で見比べられます。
まとめ
店名で検索してくれる人がいるのに、予約がポータルサイトから入ってくるのはなぜでしょうか。その理由は、検索結果の見え方、Googleビジネスプロフィールの予約ボタンの行き先、そして自社サイトの中身の薄さが重なっていることにあるのかもしれません。
この美容室では、店名で探す人が予約の前に確かめたいことを洗い出し、スタイリストごとのページとメニュー、料金を整えました。予約ボタンをどのページにも置き、Googleビジネスプロフィールの優先リンクを自社サイトの予約ページに切り替えています。料金とキャンペーン、施術の説明は、景品表示法の決まりに沿って書きました。ポータルサイトは、新しいお客さまと出会う入口として残しています。
まずは自分の店の名前で検索し、表示された予約ボタンを押してみてください。その行き先が、直接の予約を増やすための最初の手がかりになります。










